迷惑!相席ブロック・直前キャンセル・予約逃げ…バス業界が“無防備”だった歴史的理由 「キャンセル料を上げる」デメリットも

片や「キャンセル料50%」のバスも

 一方、2002年から認められ新規参入事業者が相次いだ「高速ツアーバス」という事業モデルは、制度上は旅行業法に基づく募集型企画旅行でした。

 募集型企画旅行の標準約款では、キャンセル料として「10日前以降のキャンセルの際は旅行代金の20%以内、7日前以降は30%以内、前日は40%以内、当日は50%以内、無連絡不参加などは100%以内」と定められています(上記は日帰り旅行の場合)。そのため高速ツアーバス各社では、当日キャンセルの場合は50%しか返金されませんでした。

 つまり、既存の高速バスでは「払戻し手数料」だから100円、高速ツアーバスでは「キャンセル料」として50%という風に、法令上の意味合いの違いが金額の差につながっていたのです。

 2013年、既存の高速バスと高速ツアーバスの制度を一本化するにあたり、乗合バスの標準運送約款を国が改正し、払戻し手数料の項目に「乗車する自動車を指定した普通乗車券又は座席券」の場合を追加しました。その結果、募集型企画旅行のキャンセル料とほぼ同等の設定も可能となりました。つまり、既存の高速バスにおいても「当日の払戻し手数料は50%」とすることが可能となっています。

 考えてみれば、予約制の高速バスでは、「払戻しの手数」の対価ではなく「直前まで座席を押さえたことで他の利用者に販売できなかったこと」の対価として、キャンセル日に応じた額の手数料を徴収する方が理に適っています。

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ウィラーなどのツアーバスからの移行事業者は、ほぼ全社が乗車数日前からキャンセル料を設定している(乗りものニュース編集部撮影)。

 それでも、昔からそうだったという理由で、既存事業者の高速バス路線のほとんどで払戻し手数料は今でも100~110円のままです。

 では既存の高速バスもかつての高速ツアーバスと同等の払戻し手数料を設定すればいいかというと、必ずしもそうではないと筆者(成定竜一:高速バスマーケティング研究所代表)は考えています。長距離・夜行路線はともかく、高頻度運行する中距離・昼行路線では、やはり、自由席があり、指定席に対しても乗り遅れ時の救済措置がある新幹線や特急列車との競合を無視できないからです。

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