蕎麦屋バイクの「出前機」本当にスゴいのか? フードデリバリー配達員が使ってみた結果

高度成長期に蕎麦屋の主人が開発

 當麻さんは、完成した出前機を付き合いのあった「エビス麺機製作所」に持ち込み、1959年に初めて商品化されました。発売されるやいなや出前機は大変な評判を呼び、1社だけでは注文を捌き切れなかったようで、その後は「マルシン」「コジマ厨房設備」、他2社にもパテントを与えて生産しています。

 一方、出前機と組み合わせて使われることの多いホンダ「スーパーカブ」は、出前機より1年早く1958年に登場しています。カブを開発するにあたり本田宗一郎社長(当時)は「出前持ちが片手で運転できるバイクを作れ!」と命じ、通常のオートバイとは反対の右側に方向指示器の操作スイッチを配しました。

 とはいえ、前述したようにその直後に出前機が登場、普及したことにより、実際に出前のカブが片手運転する姿が見られたのはごく短期間に終わったようです。ちなみに、この片手運転はもちろん道路交通法違反です。

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〈百〉のロゴがトレードマークの東京の町蕎麦「朝日屋暖簾会」。暖簾会とはチェーンとは違う互助組織のことで、出前機を発明した當麻庄司さんの店も会員店だった。写真は朝日屋高円寺店(山崎 龍撮影)。

 スーパーカブ同様、いまや各地で見られるようになった出前機ですが、いったいどのようにして、食品が落ちたりひっくり返ったりせず、台の上に載り続けているのでしょうか。

 その構造は、フレームが空気バネと空気バネシャフト、ジョイントピンを介して荷台を吊るす構造で、バイクの傾きに応じて荷台が振り子のように動くことで水平を確保し、空気バネによって路面からの衝撃を逃します。

 外食産業の変化により、現在では出前機の製造・販売を続けているのはマルシン1社となりました。しかし、その優秀な設計と機能は登場から65年が経過した2024年現在も、まったく変わっていません。

【ラインナップがすごい!】用途に応じて様々、これが出前機の各タイプです(写真)

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