「終列車で下車?おやめください!!」全力で制止される“秘境駅”なにがある? 電波ナシ道ナシ家もない!

1日の列車は2往復のみ、徒歩ではたどり着けず、携帯電話の電波も入らない――大自然の中にある大井川鐵道井川線の尾盛駅に降り立ってみました。なぜ、ここに駅があるのでしょうか。

かつては工事関係者用の集落があった

 井川線は、大井川電力軌道と中部電力専用鉄道が前身で、車両サイズが軌間762mmのナローゲージ規格を踏襲し、線路を1067mmへ改軌した路線です。1954(昭和29)年に中部電力専用鉄道が井川駅まで延伸して、井川ダムの建設資材や人員を輸送しました。井川発電所工事誌によると、「尾盛駅舎 昭和29年4月30日竣工」と記載があり、このときに駅が開業したと考えられます。大井川鐵道へ運行管理が移管されたのは1959(昭和34)年です。

 尾盛駅はわずかながら平地です。以下は推測になりますが、奥泉ダムから大井川ダムへと結ぶ導水路が尾盛駅背後の山中を貫いていること、駅の先には川底から70.8mの日本一高い鉄道橋梁「関の沢橋梁」が控えていたことから、建設工事の最前線場所として、この平地は役に立ったはずです。

 また駅の周囲には、工事関係者の集落が形成されました。導水路や関の沢橋梁の工事とあわせて駅施設が整備され、橋梁用の資材も集積されたことでしょう。高いホームは線路が撤去されて久しいですが、資材などの積み下ろしに使用され、井川線のホーム裏の斜面には荷物運搬用と思しきトロッコの車輪が遺棄されています。

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ホームから千頭方向を見る。右が貨物用だった高いホーム。線路は1線のみだが、もう1線あったのだろう。写真奥の左手に集落があった(2024年8月、吉永陽一撮影)。

 工事関係者の集落は数百名規模となり、一家の子供のために分校もありました。集落跡は線路端で廃墟となり、林業会社の廃屋が1軒残るのみ。駅に到着する手前で、集落跡が草生している姿が車窓から見えました。

 残暑の尾盛駅に佇んでいると、聞こえてくるのは沢の音、降り注ぐ蝉時雨、昆虫の羽音のみ。「ああ、ここは大自然の中にいるのだな」と、自分の存在が小さく思えてきます。ホームへ降りただけで感じるのが、この駅の最大の魅力です。案の定、携帯電話も圏外。しばしのあいだ、しがらみのない時間を堪能しましょう。

【写真】集落跡も! これが大自然の中の秘境駅です

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