消えた74式戦車「残るかも!?」 退役した装備品「取っときます」明記の意義 日本は遅すぎた?
動態保存や展示という方法も
行政上の帳簿から除籍されても実物を保管し、こうした有事に活用できるのがモスボールの意義です。保管は民間企業が担っていることも多く、レオパルト1は分かっているだけでドイツのラインメタル社が88両、フレンスブルガー社が99両、ベルギーのOIP社が30両、スイスのルアグ社が96両、合計313両モスボールしていました。
とはいえ企業もボランティアや趣味で古い戦車を保管しているわけではありません。いつ需要が生まれるか分からず、需要が生まれれば市場原理で価格の上昇が期待できますが、デッドストックになるリスクもあり、収益は見込みにくい事業です。それでも防衛に関わる企業として「有事に備える」という責任は認識しているようです。
2025(令和7)年度の概算要求に盛り込まれた「予備装備品の維持」は着手が遅すぎた感はありますが、モスボールの概念すらなかった日本では大きな前進です。今のところ防衛省の管轄下でモスボールするようですが、募集難で人手不足の折、外国のように民間に委託するのも一策です。メーカーで74式戦車のような古い装備を最小限のメンテで継続することは、収益性はともかく技術伝承や治具などの維持確保の期待ができます。
また、静岡県御殿場市に建設が予定されている(仮称)防衛技術博物館などで動態保存、または展示するという案もあります。稼働状態を維持しつつ募集広報という任務にも活用できます。いずれにせよ今回の要求盛り込みは、74式戦車が消滅してしまう前のギリギリのタイミングでした。溶鉱炉行きの戦車が1台でも減るよう、今後の展開を期待したいところです。
【了】
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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