「グリペン」戦闘機までウクライナに!? じつはF-16より使い勝手イイ理由「ミサイル」だって優秀だぞ!
「グリペン」供与でウクライナには別の悩みが
ウクライナ空軍は、自軍の飛行場がロシア軍の継続的な攻撃を受け続けるなか、各地へ戦闘機を分散配備し頻繁に移動することで破壊を免れていると推測されます。こうした運用方法は「グリペン」が最も得意とするところであり、整備が行き届いていない臨時飛行場での分散配備や厳しい冬季における運用にも強いという大きな特徴を有します。
「グリペン」は、短距離離着陸(STOL)能力に優れ、かつわずかな人員と最低限の支援機材しか必要とせず、整備性にも優れていることから、状態の悪い滑走路や駐機場を使用する場合は、そのメリットを十分に発揮する可能性が高いでしょう。
2024年10月現在は、F-16の運用が始まってまだ間もない時期であるため、当面は同国空軍もF-16の導入に注力すると思われます。しかし、スウェーデンによるウクライナへの軍事支援パッケージには、すでに「グリペン」用の新しい「資材キット」の購入費が含まれており、時期を見て両国が「グリペン」の引き渡しに合意する可能性は極めて高いはずです。
仮にウクライナ空軍への「グリペン」引き渡しが決定した場合、ウクライナ空軍の保有機は既存のMiG-29「フルクラム」、Su-25「フロッグフット」、Su-24「フェンサー」、Su-27「フランカー」、F-16、導入が決定している「ミラージュ2000」、それらに加えて「グリペン」が加わるため、東西の戦闘機が勢揃いする形になります。
ただ、多数の機種を同時運用するには、それぞれ違うパーツが必要となりますから、能力を維持し続けるためには、ウクライナ空軍が複雑なサプライチェーンを構築できるか、今度はその部分が課題になるでしょう。運用機種の増加は、ウクライナにとって今後、無視できない課題になるかもしれません。
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Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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