旅客機の操縦装置は「ハンドル式」「サイドスティック式」なぜ2つ? どう違う?今後“統一”の可能性はあるのか
実はあった「サイドスティック駄目じゃ…」論争、きっかけは?
航空機関士をなくして正副操縦士のみで運航させるコンピューター化は、当初「ハイテク・ジャンボ」と呼ばれた747-400が議論の対象でした。しかし、1988年、実用化直後のA320が航空ショーでのデモフライト中に墜落事故を発生させてしまいます。1992年にも着陸降下中の機体で事故が起きます。
このことで、ハイテク機自体の安全性をめぐり一気に“炎上”したのです。サイドスティックも、「機長席は左側、副操縦士席は右側にあり互いの操作が見えず連携がしにくい」と非難の対象になりました。
ただ、こうした議論はベテランが中心で、若手はその違いをさほど問題にしていまなかった模様です。A320が日本で導入された頃、サイドスティックをどう思うかと筆者がA320の若手機長に尋ねたところ、「正面に操縦輪がない分、(折り返し便の出発前に)席を後ろに下げなくても弁当を食べられますね」と、操縦そのものについては気にしていない答えが返ってきました。
それから約40年。ブラジルのエンブラエル機は中央に操縦輪を配置していますが、カナダのボンバルディアが開発した現エアバスA220や中国のC919はサイドスティックを採用しています。一方で、米ブームが開発中の超音速旅客機「オーバーチュア」のシミュレーターもサイドスティックで、トレンドはサイドスティックに傾いているように思います。
こうなると、ボーイングがいつまで操縦輪を中央に配置し続けるのか、に関心は移ります。ボーイングが仮にサイドスティックを採り入れるとしたら、いずれ再浮上するであろうNMA(新中型機)が有力ですが、まず経営態勢の回復が緊急の課題のため、NMA自体の早期の実現はなさそうです。
それに、サイドスティックの採用はエアバスの後追いと映るでしょう。また、新型機は「旧型のボーイングと操縦の共通点が多い」というのも立派な訴求ポイントの一つになります。それゆえボーイングは操縦輪を中央に置き続け、操縦輪とサイドスティックは並立し続けるのかもしれません。
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Writer: 加賀幸雄(旅行ライター)
日本各地の名産や景勝に興味があり、気ままに目的地を決めて2泊3日程度の 小旅行を楽しんでいる。
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