「歩道上の駅入口」は貴重だった!? 3形態ある出入口「どこに置くか問題」は地下鉄の“悩みあるある”だった
地下鉄駅の出入口は、古い路線だと道路の歩道上にあることが多く、新しい路線だとビルと一体化したものが多い傾向にあります。この背景には、東京メトロ(帝都高速度交通営団)の場合、戦前から連綿と続く地下鉄建設と整備ルールの深い関係がありました。
昔からある「地下鉄駅の出入口をどこに置くか問題」
地上から線路の見えない地下鉄にとって、顔と言えるのが駅の「出入口」です。路線、駅によって出入口の様式は様々ですが、歩道上にあるものと、歩道に面しているもの、ビルなどの建物と一体化したものに分類できます。古い路線では歩道上にあるものが多く、最近の路線はビルと一体化したものが多いのはなぜでしょうか。
日本最古の地下鉄、銀座線浅草~渋谷間の建設にあたっても出入口の設置は悩みのタネでした。駅の乗降客数に必要な出入口数と寸法は、ニューヨーク地下鉄の基準を参考に、階段1フィート(約30cm)ごとに毎時1000人が通過できるとみなして算出しましたが、その出入口をどこに置くかが問題でした。
歩道や中央分離帯に出入口を設置したニューヨークやベルリンの地下鉄に倣い、出入口を歩道上に設置したい考えでしたが、簡単には認められません。歩道の利用が認められないと、沿線の一等地を用地買収しなければならず、事業として成立しません。
国や東京市は当初「各停留場出入口ハ歩道有効幅員ヲ縮小セシメザル様設置スルコト」として事実上、不可能に近い条件を提示しましたが、最終的に12フィート(約3.7m)の幅員を確保すれば設置を認めることになりました。
協議の過程で市は、道路を使用したいのであれば、出入口を地下横断歩道(自由通路)として使えるよう要求するようになり、その結果、銀座線の末広町以北の駅は浅草、上野を除き階段を降りるとすぐホームなのに対し、神田以南の駅はいずれも「中二階」を設ける設計になりました。
これは1960年代まで、道路使用条件のひとつに「各駅の出入口は、原則として、一般歩行者が道路の地下横断連絡通路として利用できる構造とすること」を掲げる形で引き継がれました。
出入口の問題は場所だけではありません。階段を覆う柱や屋根など「上家」で交差点の見通しが悪くなっては危険なので、国や市は「上家ヲ設クル場合ハ占用面積ヲ最小限度ニ止メ、且車道ヨリ店舗ヲ透視シ得ル構造ト為スコト」との条件を加えました。
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