「戦闘機界のシビック」F-16が選ばれなくなってきた根本理由
ウクライナでも重宝されるF-16戦闘機。1970年代以降の戦闘機では群を抜く人気モデルとして現在も生産が続いていますが、最近は商戦で敗北を喫しています。なぜ他の戦闘機が選ばれるケースが増えているのでしょうか。
F-16の後継に「ロシア機」いや「中国機」
エジプトは2024年12月現在、1980年代に引き渡された初期型のF-16A/Bを40機と、その後段階的に買い増したF-16C/Dを178機運用しています。
初号機の引き渡しから40年以上が経過したF-16A/Bを置き換えようと、エジプト政府は当初、その後継機をF-16Vとするためアメリカ政府と交渉していました。しかしまとまらず、エジプトメディアは2019年に、ロシアが提案していたSu-35戦闘機が内定したと報じました。
エジプトがロシアとSu-35の導入に向けた交渉をしていたのかは不明ですが、ウクライナ侵攻後、導入を公式に否定。その後もエジプトは、F-16A/Bの後継機の選定作業を進めていました。同国メディアは2024年9月に、アメリカがロシアとともに神経を尖らせている中国とパキスタンが共同開発した「J-10C」戦闘機が内定したと報じています。
J-10Cを選択した理由の一つは、1機4000~5000万ドルという、F-16Vより1000~2000万ドル近く安い価格にあると、エジプトメディアなどは報じています。
このJ-10Cの導入についてエジプト、中国、パキスタンの各国政府から公式な発表はありませんが、2024年9月にエジプトのエル・アラメインで行われたエアショーにJ-10Cが参加していたことなどから見て、ある程度、話は煮詰まっているものと考えられます。
F-16Vはタイでもフラれた
タイ空軍は1980年代後半から2000年代前半にかけて、エジプトと同じF-16A/Bと、その改良型F-16AM/BMを導入しています。このうちF-16A/Bは老朽化が進んでおり、タイ空軍は2022年1月から後継機の選定作業に着手していました。
タイ空軍は当初、F-16A/Bの後継機としてF-35A戦闘機の導入を希望していました。しかしアメリカはF-35の輸出に必要な条件をタイが充たしていなかったことを理由に、これを拒否。代わりにF-16Vを提案しました。
しかしタイ空軍はF-16Vを採用せず、2024年8月にスウェーデンが提案したサーブ「グリペン」の最新モデル「グリぺンE/F」を採用すると発表しました。
タイ空軍の選択は、F-35Aの輸出を拒否したアメリカに対する反感という面も多少はあるのでしょうか。ただ同空軍は、JAS39(グリペンの機種番号)E/Fの前モデルであるJAS39C/Dや、早期警戒機S-100「アーガス」などのサーブ製軍用機を運用していますので、運用実績の積み重ねによるサーブ社製軍用機への信頼や慣れも、グリペンE/Fに有利に働いたのかもしれません。
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