「昔は銃メーカーでした」 ルーツが意外すぎる世界のビックリ自動車企業 トホホな転身の理由も
世界には、19世期後半から20世紀初頭にかけて銃器で培った技術力を背景に、自動車やバイク製造に進出したメーカーが存在します。なぜこれらの企業は自動車やオートバイの製造に乗り出すようになったのでしょうか。代表的な企業を見てみます。
「ベネリ」「FN」と聞いて連想するものは?
また、トヨタ「GRスープラ」やBMW「Z4」の生産を請け負うオーストリアのマグナ・シュタイア社も、銃器メーカーの流れをくんでいると言えるでしょう。
同社の前身であるシュタイア・ダイムラー・プフ社は、もともと小銃メーカーで、2001年に銃器部門が分社化されましたが、1864年の創業から現在まで狩猟用ライフルのほか、ブルバップ式の軍用ライフル「ステアーAUG」を製造しています。
ユニークな歴史を持つのはイタリアのベネリです。同社は夫を亡くしたテレサ夫人とその息子たち5人兄弟によって創業した二輪メーカーで、自動車やバイクの修理工場を経て1921年に市販1号車の発表するいっぽうで、猟銃の製造も手がけるようになりました。
同社は、1970年代に日本車の台頭で経営危機に陥ったため、モト・グッツィと合併しています。その後、二輪ブランドは休眠状態になりますが、一方で銃器部門は分社化されベネリ・アルミ社となった後も好調を続け、ベネリM1やM4などの高性能なセミオートマチック式散弾銃を開発しています。
この銃は世界の軍隊や警察で使用されるベストセラーとなりました。
過去に自動車を生産していた銃器メーカーで、もっとも有名なのがベルギーのFN社でしょう。この会社は「Nationale d’Armes de Guerre」、日本語に訳すと国営兵器製造会社という言葉が社名の元で、1899年から1930年代後にかけて主に高級車を製造していました。
とは言うものの、FNにとって自動車製造は本意ではなく、M1889小銃とその改良型であるM1893小銃の製造権を巡り、ドイツのマウザー社との法廷闘争で敗れたことにより資金繰りが悪化。これを補うために自動車ビジネスに参入したというのが大きな理由でした。
FNが製造した高級車はベルギーやペルシャ(現イラン)の王室にも納入され、好調を博していたようですが、世界恐慌の直前にラインナップを大幅に強化したのが裏目に出て1930年代に経営が悪化、乗用車製造から撤退せざるを得なくなります。ただ、その後もベルギー国内の需要を賄うために、1960年代までトロリーバスを生産しています。
Writer: 山崎 龍(乗り物系ライター)
「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に
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