空自「最新鋭戦闘機」がまさかの納入遅延 実は世界中で!? 背景にある“根深い問題”とは
2025年1月10日、防衛省は航空自衛隊に配備予定のF-35A/B戦闘機について、いずれも納入が遅れる見込みであると発表しました。背景には同機のソフトウェア開発の遅延があるといいますが、じつはそれ以外にも防衛産業を巡る大きな問題が見えてきました。
納入遅延、真の問題はドコ!?
エマニュエル氏が批判した、アメリカの大手防衛企業の経営姿勢もアメリカ製防衛装備品の納入遅延の大きな原因だと筆者は思いますが、防衛装備品だけではなく、数年前から工業製品全般で発生しているサプライチェーンの世界的混乱も一因なのではないかと思います。
サプライチェーンとは、原材料の調達から生産、流通、販売に至るまでの流れを指す経営用語です。工業製品のサプライチェーン混乱の原因は、新型コロナウィルスの世界的流行や輸送力の不足など複合的なものですが、防衛装備品に限っていえば、部品やコンポーネントなどを製造する下請け企業の不足が大きな原因のひとつと考えられます。
たとえば、海上自衛隊の運用しているUS-2救難飛行艇は、胴体と翼部を供給していた下請け業者の三菱重工業と川崎重工業がUS-2のコンポーネント製造から撤退したため、2024年8月に退役した機体の部品を再利用するなどして、どうにか令和7年度予算案に1機の調達費を計上できたというのが現状です。
防衛省もこの問題を深刻に受け止めており、令和7年度予算案に供給源の多様化や、安定調達が可能な部品への切替えのための研究開発費などとして6億円を計上しています。
どれだけ優れた技術があったとしても、それを形にできる製造基盤が無ければ無意味ですから、この種の政策により注力していく必要があると筆者は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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