特急の「半個室席」復権? 個室の時代にあえて“セミコンパートメント” 新型やくもで“狙い通り”人気爆発した理由とは
「普通の座席以上、個室以下」という位置づけの半個室空間「セミコンパートメント」が、JR西日本の特急「やくも」の新型車両に設置され、人気が沸騰中です。中途半端との受け止めもある“半個室”ですが、デザイナーに導入理由を尋ねると納得でした。
満席御礼! 「やくも」入魂のセミコンパートメント
JR西日本が2024年4月に営業運転を始めた特急「やくも」の新型車両273系の“目玉”となっているのが、家族やグループが向かい合って腰かけることができる座席「セミコンパートメント」です。4両編成のうち出雲市側の先頭車(1号車)の後ろ半分に、2人用が2つ、最大4人用が2つの計4か所あります。

シンボルマークの「雲」にちなんで通路側には雲の形をした木のパネルを設置し、プライベートな空間を演出。座席間には小型ランプを置いたテーブルがあります。
8両編成で運用する列車では1号車に加え、5号車もセミコンパートメントのある車両が連結されるため計8か所が用意されます。しかし、行楽客が多く乗る土休日を中心に「満員御礼」で埋まることも多く、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は「やくも」を出雲市から利用した際に米子までは何とか予約できました。
「やくも」の臨時列車として走った2025年1月5日が「営業運転のラストランだった」(JR西日本関係者)という先代の381系には、セミコンパートメントはありませんでした。それでもなぜ導入しようと考えたのか、デザインを監修した川西康之さんに質問すると、興味深い逸話を教えてくれました。
「やくも」が取りこぼしていた層にアプローチ
川西さんが273系の開発段階でセミコンパートメントの導入を着想した背景には、「沿線の人口減少に加え、航空機や高速バス、自家用車との競合が非常に厳しい中で『やくも』の利用者がかつてと比べて減少したという背景がありました」と説明します。
そこで、取りこぼしている利用者層を考えると「特に小さな子どもを連れた子育て世代ではないか」と思い至ったそうです。
小さな子どもがいる家族連れの場合は「自家用車で山陰まで何時間も運転するのはやや厳しく、航空機や高速バスでもしんどい」一方で、「やくも」ならば「東京から鹿児島中央まで結んでいる(東海道・山陽・九州)新幹線と岡山駅でたった1回乗り換えればいいので、実は一番便利」だといいます。
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