「巨大輸送機、買うよ」石破総理の本気度 軍事マニアのご趣味ではなさそうなワケ

2025年2月に訪米した石破総理大臣は、その際トランプ大統領にアメリカ製の輸送機を購入する意欲を示したと報じられました。一部報道によると、そこで名前が挙がったのは戦術輸送機「C-17」とのこと。その背景にはどのようなワケがあるのでしょうか。

実は壮大な計画かも!? C-17購入に意欲のワケ

 航空自衛隊の輸送機戦力の刷新・増強計画は、C-130HとKC-130Hの更新を機に、 機動展開能力の強化という目標を達成する手段の一つと位置づけられています。この計画の具体的な方向性はまだ定まっていないと筆者は聞き及んでいます。

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オーストラリア空軍の運用するC-17。2011年の東日本大震災の際には3機が日本に派遣され、救援物資の輸送で大きな役割を果たした」(画像:オーストラリア空軍)。

 その選択肢の中にはC-1の後継としてのC-2の調達を打ち切り、C-17を購入してウクライナ支援のような大規模国際貢献と、有事や大規模災害発生時のハブ空港間の輸送といった任務に充て、並行してC-130H/KC-130Hの後継機として、C-2には無い空中給油能力(飛行中に他の航空機に給油する能力)を持つ、エアバスA400MやエンブラエルKC-390などの輸送機を購入して、航空自衛隊の総合的な輸送能力と作戦能力を増強するという考えも含まれているようです。

 C-2はよくできた航空機だと思いますが、同機が開発された20世紀後半から21世紀前半と現在では、日本の置かれた環境や安全保障政策は激変しています。前に述べた空中給油能力の欠如など、C-2がその変化に適応できなくなりつつあるという考えにも、筆者は一理あると思います。

 筆者がこの計画を知ったのは最近のことなので、正直な話、にわかには信じられませんでした。しかし、国産防衛装備品に好意的な佐藤正久参議院議院が2025年2月27日に自身のX(旧Twitter)公式アカウントで、わざわざC-2の名前を出して石破首相を批判されているのを見て、C-17の導入がある程度真剣に検討されている証なのではないかと筆者は思いました。

 2025年3月4日に開催された衆議院予算委員会で、石破首相は日本共産党の田村貴昭衆議院議員からの質問に答える形で、「一般論として輸送機(戦力)の強化が必要で、輸送機は飛行距離が長く大きい方がよい」と述べ、また田村議員からのC-17は運用できる空港が限定されるのではないか?という質問に対しても「であれば世界でこれほど(C-17が)使われていない」と反論しています。

 石破首相が従前からC-17の導入に好意的であったためか、SNSでは「軍事マニア趣味で欲しがっているのではないか」といった書き込みが見受けられます。しかし、石破首相は2024年10月1日に首相に就任していますが、航空自衛隊の輸送機戦力の増強・刷新計画は遅くとも2023年には検討が開始されていたものと考えられます.

 したがって、共同通信の報道が事実だとすれば、石破首相は単なる軍事マニア趣味や、トランプ大統領の歓心を買うためではなく、首相就任前から存在していた安全保障政策の実現可能性を探る目的で、アメリカ製輸送機を購入したいという考えを、トランプ大統領に伝えたと考えるべきでしょう。

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Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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