ブサイク過ぎる… 傑作「シャーマン」戦車ファミリーの“異端児” 頭でっかちのヘンテコになったワケ

アメリカ軍の主力中戦車M4「シャーマン」には数々の派生型が存在しますが、なかでもひときわ異形なのがT31でしょう。「破壊戦車(デモリション・タンク)」と名付けられた、この異端児がなぜ生まれ、量産されなかったのかひも解きます。

ロケットランチャーを内蔵するために

 そこで、アメリカ陸軍は1944年11月から開発に着手。車体には当時、同軍の主力中戦車だったM4「シャーマン」の最新モデルであるM4A3E8、通称「シャーマン・イージーエイト」を用いること、そして砲の代わりに連射式ロケット弾発射機を搭載することが決まります。

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陸上自衛隊の富士駐屯地に保存展示されているM4A3E8戦車。陸上自衛隊でも発足から1970年代前半まで使用されていた(柘植優介撮影)。

 このロケット弾は、海軍の対潜水艦用ロケット弾を、障害物の破壊や地上戦用に転用したものです。ただ、ロケット弾の発射レールを車体外側に直付けすると、戦闘中にロケット弾が被弾して誘爆したり、再装填の際に装填手が死傷したりするおそれがありました。

 そこで発射装置をレール式ではなく発射筒式として、その後端部に拳銃のリヴォルバーのような5連装の回転式弾倉を取り付けた連射式ロケット弾発射機T94を開発。同発射機を左右に1基ずつ内蔵した大型砲塔を造りました。左右に振り分けられた同発射機が収納された砲塔の後部には、ロケット弾発射時の噴煙を車外に排出するための噴射孔も開けられています。

 砲塔左右に取り付けられた連射式ロケット弾発射機は、砲塔の左右の外周を成している発射機の収納部ごと、プラス34度からマイナス15度までの角度を変えることができました。

 なお、砲塔中央にも砲身がもう1本伸びていますが、これはダミーで射撃することはできません。よそで消耗した105mm榴弾砲の砲身を流用したもので、左右のロケット弾用のものと合わせて、3本もの砲身が巨大な砲塔から伸びている様は異様です。

 ちなみに、ダミー砲身のすぐ下には7.62mm機関銃が左右に1丁ずつ、計2丁装備されていました。

【まるで宇宙人顔?】前から見ても上から見ても「ヘンテコ」なT31をイッキ見(画像)

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コメント

1件のコメント

  1. こういう後付装備のために不格好になった車両の方がただカッコイイ車両よりも魅力を感じるのは私だけだろうか・・・

    後付、ポン付け、無理な拡張から来るこの違法建築感がたまらない(笑)