戦車急造いまから間に合う? 自動車メーカーなど工場転換へ トランプ大統領も不満あらわな欧州事情
ロシア・ウクライナ戦争を経て、ヨーロッパでは自動車メーカーや鉄道車両メーカーが戦車の生産を始めようとしています。2010年代初頭の“雪解け”が一変した今、軍需企業の戦車製造ラインを停止したツケが回ってきている模様です。
懸念はウクライナ情勢だけではない
ヨーロッパの産業界では軍需への投資が急速に行われ、EU(ヨーロッパ連合)の行政執行機関である欧州委員会は2025年3月14日、ウクライナ支援と防衛能力強化のための大規模な投資計画「Rearm Europe:ヨーロッパ再武装」を各国に対し提案しました。防衛投資のために約8000億ユーロを計上し、加盟国に1500億ユーロの融資を提供するというものです。

ただ、この背景にはウクライナ情勢と兵器不足だけでなく、アメリカが欧州安全保障から撤退する可能性、さらには欧州経済の沈下など政治経済的な要素も複雑に絡み合っています。名だたるVWやBMWなどのドイツ自動車産業は、EV政策の失敗と市場の縮小、中国との競争激化から2024年12月、期連結決算でVWが最終利益33%ダウン、メルセデスベンツが28%ダウン、BMWが35%ダウンという総崩れの状態です。さらにトランプ関税の影響も懸念され、先行きは不透明感を増すばかりです。
一方で防衛産業は斜陽産業から復活し株価も上昇しています。平和ボケ時代にも戦車製造ラインを維持し続けたラインメタルの鼻息は荒いのですが、英国のBAEシステムズ、スウェーデンのサーブ、イタリアのレオナルドなども業績を伸ばしています。
こう紹介すると「『死の商人』が戦争を煽って利益を挙げている」という論調が必ず聞こえてきますが、実際には防衛産業は、経済規模や利益率でも自動車産業や情報通信事業にはるかに及ばず、ヨーロッパの経済界は防衛産業を「儲からないビジネス」と見なして興味すら示していません。「死の商人」という言葉自体が死語同然の状況です。
今やヨーロッパ全体を合わせても、その防衛産業の規模と影響力はアメリカ一国に及びません。その規模や影響力を鑑みると、「欧州が防衛投資を軽視し過ぎていた」とトランプ大統領が不満を示すのも一理あるほどです。
そのようななか、鉄道車両や自動車工場を戦車生産に動員するという、第2次大戦時を彷彿とさせるような時代が再来するとは、皮肉でしかないといえるでしょう。
※漢字を修正しました(3月31日10時55分)
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
治金じゃなくて冶金(サンズイではなく、ニスイ)
基礎用語、それも分野を表すような基礎の基礎の言葉も知らずに記事を書くのばかりになったな。程度が分かるというもの
乗りものニュース編集部です。
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