北海道へ渡った「鼻の短い新幹線」どう使う? 元JR東日本の車両 カギは“密閉空間”の高速化

2025年4月、かつて東北・上越新幹線で使われていたE2系が函館港に姿を見せました。目的は何なのか、JR東日本から購入した現オーナーの鉄道・運輸機構を直撃しました。

北海道新幹線のボトルネック「青函トンネル」をより速く

 かつて東北・上越新幹線で使われていたE2系新幹線電車が2025年4月、函館港に陸揚げされました。ただ、北海道新幹線はロングノーズのH5系・E5系電車(前者はJR北海道、後者はJR東日本)しか走らないはず。1編成だけ異なる構造の車両を用意した目的は何なのでしょうか。

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函館港に陸揚げされた、元JR東日本のE2系新幹線電車(2025年4月4日、松永直也撮影)

 北海道新幹線は2025年4月現在、新青森駅から新函館北斗駅までの148.8kmです。このあいだには津軽海峡をくぐる青函トンネルがあります。しかし、同トンネルは貨物列車も走るため、速度差の違う両者のすれ違いを考慮し、新幹線は最高速度が160km/hに制限されています。

 ただし、この速度制限は所要時間の観点ではマイナス要素であり、できればほかの地上区間と同じように260km/hで走行することが望ましいのはいうまでもないでしょう。JR北海道はこれまでも、貨物列車の運行が少ないゴールデンウィークやお盆期間などに、営業列車を用いてトンネル内で260km/h走行する試験を行ってきました。

 今後はトンネル部分(約54km)に加え、その前後にある「明かり区間」を含めた約82kmで、ゴールデンウィークやお盆期間などに260km/h走行することを目指します。こうすることで、所要時間は明かり区間とトンネル部分を合わせ、現行より14分短縮できる見込みです。

 これに向け2025年度から、走行試験用の車両およびシステム改修が行われます。このとき使用されるのが、前出のE2系です。函館到着時の所有者は鉄道・運輸機構(JRTT)ですが、元々はJR東日本が使っていたもので、2025年4月、新潟から函館へ船便で運ばれてきました。

 鉄道・運輸機構によると、E2系は10両が譲渡されたとのこと。今後は函館新幹線総合車両所で改修を受け、明かり区間とトンネル部分での高速走行試験に用いられるといいます。なお試験期間は現時点で未定としています。

 北海道新幹線の高速化に貢献するために海を渡って函館入りした「鼻の短い新幹線」。それが担う使命は、将来を見据えたものでした。

こうすれば高速化OK!「青函トンネルもっと速く」の概要です(画像)

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