沈めた敵艦の乗組員に「当時ではスマートすぎる事後対応」WW2下で実在した“武士道溢れし艦長”とは

第二次世界大戦中、当時の軍人精神からか「多くを語らず」を貫いたものの、悲惨な戦争のなかで稀に見る紳士的で、模範的なもの行動をとった艦長が存在しました。

過酷な戦争で数少ない美談

 戦いの後、海上には連合国軍の兵士が多く漂流し、日本海軍の艦艇はそれぞれに救助活動を開始します。そんな中で大きな活躍をしたのが、工藤艦長率いる「雷」でした。「雷」は、連合国軍が設置した機雷原の中に恐れることなく飛び込み、イギリスの重巡洋艦「エセクター」。駆逐艦「エンカウンター」の乗組員を中心に422名のイギリス海軍将兵を救出したといいます。

Large 20250417 01

拡大画像

スラバヤ沖海戦で沈没したオランダ海軍の軽巡洋艦「デ・ロイテル」(画像:パブリックドメイン)

 この人数は「雷」の乗組員(約200名)の倍にも及びました。艦内は一時パニックになったといいますが、それでもイギリス軍士官の号令により、彼らも整然となったといわれています。

 救助したイギリス将兵たちに、工藤艦長は貴重な真水や乾パンを分け与え、英語で「諸君は果敢に戦われた。今、諸君は大日本帝国海軍の大切な賓客である。私はイギリス海軍を尊敬するが、日本に戦いを挑む貴国政府は実におろかである」と挨拶したといわれています。その後、イギリス兵と「雷」の乗組員はすっかり打ち解けてしまい、「艦内軍紀を遵守せよ」というお達しが出されるほどであったといいます。

 第二次世界大戦はイデオロギーや人種問題が複雑に絡み合った戦争であり、捕虜の過酷な扱いに関しては参戦国全てにエピソードが残っていますが、工藤艦長と「雷」の行動は、悲惨な戦争で稀に見る紳士的で、模範的なものであったといえるでしょう。

 工藤艦長はその後、駆逐艦「響」の艦長や海軍予備学生採用試験臨時委員などを歴任し終戦を迎えています。

 しかし、この「雷」の敵兵救出の逸話は、その後長い間語られることはありませんでした。工藤艦長の親族ですら、知ることがなかったほどです。

 この逸話が明らかになったのは、スラバヤ沖海戦で救出されたイギリス海軍士官のひとり、サムエル・フォール元海軍中尉が、1987年にアメリカ海軍の機関紙に「武士道(Chivalry)」と題して工藤艦長の行動をたたえた投稿文を掲載、その後、彼自身が工藤艦長に感謝を伝えたいと来日したことがきっかけです。

「雷」に救助されたフォール元海軍中尉は当時、砲術士官でした。彼は戦後、外交官として活躍する傍らずっと、命の恩人である工藤艦長の消息を探し続けていたといいます。彼は「武士道」を発表した翌年にもイギリスのタイムズ紙に「雷」の敵兵救助を紹介する文章を掲載し、当時イギリス国内に高まっていた反日感情の緩和を図りました。彼が消息を探し当てた時すでに工藤俊作氏は他界していましたが、それでも2回目の来日では、その念願の墓参りを 果たしました 。

 そのとき、彼は「ジャワの海で24時間も漂流していた私たちを小さな駆逐艦で救助し、丁重にもてなしてくれた恩はこれまで忘れたことがない。工藤艦長の墓前で最大の謝意をささげることができ、感動でいっぱいだ。今も工藤艦長が雷でスピーチしている姿を思い浮かべることができる。勇敢な武士道の精神を体現している人だった」と語りました。スラバヤ沖海戦から66年後のことでした。現在ではこの「雷」による敵兵救出をたたえ、工藤艦長の出身地である山形県高畠町には顕彰碑が建立されています。

【す、凄まじい攻撃…】これが、スラバヤ沖海戦で攻撃を受ける4か国艦隊です(写真)

Writer:

なぎはまな。歴史は古代から近現代まで広く深く。2019年現在はフリー編集者として、某雑誌の軍事部門で編集・ライティングの日々。趣味は自衛隊の基地・駐屯地めぐりとアナログゲーム。

最新記事

コメント

1件のコメント

  1. 連合国にオランダではなくオーストリーが入っちゃってますよ。

記事ランキング

  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  3. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号
  4. 飛行中の「日の丸特別機」に粋なサプライズ! 天皇皇后両陛下を“最新ステルス戦闘機”がお出迎え
  5. 「危なすぎる!」阪神高速“中の人”がブチギレ!? “衝撃動画”とともに呼びかける「ドライバーが守るべき3つのこと」とは
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  3. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 「“再有料化”でいいから4車線化して」→普通車280円になって1年 利用者負担で勝ち取った“効果”あきらかに 八木山バイパス