南シナ海の軍事バランス一変か?「10年前は戦闘機ゼロだった国」一転して機数3倍に! 韓国製の性能に不満も
フィリピンが本格的な戦闘機の導入を計画しています。最終候補はアメリカ製のF-16とスウェーデン製の「グリペン」だとか。これら新型機の本格運用が始まれば、南シナ海における軍事バランスも一変しそうです。
中国に対する抑止力となるか?
F-16および「グリペン」は、いずれも第4世代戦闘機として完成された設計を有しながら、搭載するアビオニクスやセンサー統合能力など、一部システムや性能については第5世代機に比肩し得るレベルを備えています。他方で、AESAレーダー、高度なグラスコックピット、戦術データリンク、新型の電子戦装備を有するため、最大で40~50年に及ぶ耐用年数も考慮すると、コスパ良く空軍力の質的飛躍を可能にすると見込まれます。

このクラスの機体を装備することは、単なる戦力アップに留まらない、国際戦略的にも大きな意義を持っています。南シナ海を挟んで対峙する中国空軍は、多様な高性能戦闘機を運用しており、それに質の面で対抗し得る航空戦力を持つことは、抑止力の観点からも極めて重要です。そうした点から、フィリピンが「グリペン」もしくはF-16を導入するのは、この空域においても一定の発言力と存在感を持つ国家へと脱皮することを意味します。
しかし、この選択には相応の代償が伴うでしょう。機体価格は構成・装備内容・付随する支援パッケージによって左右されますが、1機あたりおおむね1億ドル(約145億円)に達する可能性があります。
仮に20機を導入すれば、総額は20億ドル(約2900億円)規模にのぼり、これはフィリピンの国家財政にとって決して軽い負担ではありません。さらに、導入後の維持整備費、パイロットおよび整備員の訓練、兵站・運用基盤の整備といった継続的なコストも無視できないものとなります。
ゆえに、この計画は軍備増強というだけではなく、国家としての安全保障観、外交姿勢、そして経済的覚悟を問う、“総合的な国家戦略”であると言えるでしょう。
民主主義国家かつ中国の脅威を受けているという共通の価値観を持つ、日米豪をはじめとする地域安全保障の枠組みの中で、フィリピンがいかなる立ち位置を確保するのか、MRF計画はその答えを示すものになろうとしています。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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