50年ぶり! 米空軍の「戦略爆撃機」本州最北の軍用飛行場に配置へ「核兵器の運用ムリ」だから最適、その理由は?
青森県の三沢基地に2025年4月18日、B-1B「ランサー」爆撃機が飛来しました。ただ、今回は単なる飛来ではなく「配備」のようです。また同機は隔壁の運用が無理ですが、その方が適しているとも。どういうことでしょうか。
三沢基地に展開するアメリカ側の意図は?
B-1Bの役割は明確です。大きなペイロードを活かせば、多数のJASSM巡航ミサイルやLRASM対艦ミサイルを搭載することができ、その他各種誘導爆弾を組み合わせて運用することが可能です。さらに限定的ながらステルス性を備え、可変翼による高速飛行能力を備えており、長大な航続距離ゆえにそれを活かした高い戦力投射能力を誇ります。

では、このような機体が青森県の三沢基地に配備される意図はどこにあるでしょうか。アメリカ空軍では「爆撃任務部隊(Bomber Task Force:BTF)」と呼ばれる即応展開部隊を常に用意しており、これを自軍のみならず同盟国まで含んだ様々な基地に派遣しています。今回の三沢展開もその一環で、アメリカ国防総省では「脅威の抑止と地域の安定維持に対する自国なりの関与」だと主張しています。
これらを鑑みると、北朝鮮や中国を見据えたものであると考えることができるでしょう。
これまでグアムや米本土の基地から出撃していた戦力を日本に前進配置すれば、インド太平洋エリア全体で万が一、戦火があがった際の応答速度は格段に向上します。特に南シナ海や台湾海峡、北朝鮮といった潜在的な衝突点をにらんだ際、数時間の短縮は極めて戦略的な意味を持ちます。
前述した通りB-1Bには核兵器が搭載できません。ゆえにその存在が持つ「メッセージ性」が、B-2やB-52といった他の爆撃機比べ、より「限定的だが通常戦争向き」であるとみなせるでしょう。つまり、核の影をちらつかせることなく、確実な反撃能力があることを示すことができます。
なお、三沢基地におけるB-1Bの滞在期間は明らかにされていませんが、2025年4月現在、4機が展開しています。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
コメント