ヒヨッコから僅か半年で最新ステルス戦闘機乗りへ 豪空軍のスーパー時短訓練とは? “卒業試験”は実戦と同じことまで
航空自衛隊が導入を進める最新鋭ステルス戦闘機F-35A「ライトニングII」。この戦闘機のパイロット育成が近い将来変わるかもしれません。すでに変化しているオーストラリア空軍の訓練方法を解説します。
最終試験はガチの実戦形式
2025年4月現在、オーストラリア空軍はF-35Aを75機保有しており、それらを3つの飛行隊と訓練部隊である2OCU(運用転換飛行隊)、計5つの部隊で運用しています。

オーストラリア空軍では2018年よりF-35の運用が始まっており、当初はこの機体と入れ替わりで退役したF/A-18「ホーネット」のパイロットたちが、2OCUで機種転換訓練を受けることでF-35乗りになっていました。しかし、現在では訓練を受けるのは新人パイロットが中心です。
2OCUの訓練は期間だけ見ると約6か月(個人の能力に応じて伸びる場合もあり)と短いものですが、その内容は非常に内容の濃いもので、訓練を受けるパイロットにとっても簡単なものではないようです。
最初に4週間の学科とシミュレーター訓練を受け、6週間の基本飛行訓練を行います。その後、12週間の戦術飛行と統合運用訓練を実施。そして、最後に「ハイ・シエラ」と呼ばれる演習に参加します。
この演習は単にF-35を飛ばすだけでなく、敵役や訓練支援でホーク127ジェット練習機を参加させるなどして、複雑かつ大規模な航空作戦の立案と実施まで行い、さらに攻撃手順を演練するために実弾を用いることもあります。
また、F-35の特徴である高性能データリンクを活用し、他のプラットフォームと実戦形式で連携するために、オーストラリア空軍のE-7A早期警戒機やKC-30A空中給油機との共同運用も行われます。
「ハイ・シエラ」演習はただの操縦訓練ではなく、実戦を想定した状況で訓練の成果を試すものであり、F-35パイロットにとっては卒業試験に近しいものといえるでしょう。
このように、2OCUにおける6か月間の訓練は非常に密度が高く、その内容も操縦方法だけでなく実戦での運用が学べるものになっています。ただし、F-35のすべての訓練がここでの6か月間で済むワケではありません。実は、新人隊員が空軍でパイロットとしての訓練を始めた時点から、その準備は始まっているのです。
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