山手線の駅前が再開発で「初見殺し」レベルに分かりづらくなった件 “クルマ排除・人優先”の理想と現実

大ターミナル池袋駅の“人優先”を掲げる再開発に先立ち、同様のコンセプトで生まれ変わったのが、隣の大塚駅です。ただ駅前からクルマを排除した結果、クルマの動線は分かりづらくなり、歩行者の危険が増したのでは……と思える側面もあります。

「クルマ排除」で崩れた?安全のバランス

 また歩行者にとっては、ここ以外にも、再開発で事故のリスクが高まったのではないかと懸念される場所があります。それは大塚駅北口から大塚北口商栄会商店街に渡る横断歩道です。

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2021年に整備が完了した北口駅前。大小ふたつのロータリーを備えるという構造には変化がないが、歩道部分は拡幅された(植村祐介撮影)

 かつて北口のロータリーには、空蝉橋側、大塚ガード側、宮仲公園通り側と、おおまかに3つの出入口がありました。しかし北口駅前広場のリニューアルで大塚ガード側の出口は塞がれ、現在は空蝉橋側、宮仲公園通り側でしか出入りできません。そのため、それぞれの交通量は以前よりも増えている印象です。

 そしてこの空蝉橋側とつながる道が、大塚北口商栄会商店街へ渡る横断歩道と交差しますが、歩行者用の信号がないため、途切れない歩行者にいらついたクルマの強引な走行が目に付きます。歩行者の安全を考えるなら、必要最小限の信号も必要ではないでしょうか。

 さらに一方通行化された大塚ガードは、北から南に向かう自転車にとって危険をはらむ状況となっています。

 同ガードには自転車レーンが車道の両側に設置されていますが、その幅員はけっして広くはありません。そして宮仲公園通り側では車道が右折レーン、直進レーンの2車線になるため、南に進む自転車は真正面から直進レーンを進んできたクルマと安全な間隔をとることが難しい状態なのです。安全を考えるなら、むしろ「自転車も含めて南から北への一方通行」とすべきではないかとも思える状況です。

 車道と歩道の幅員を設計するにあたり、自転車利用についての思慮が十分であったのかという疑念は払えません。

 豊島区が大塚駅前の再開発に掲げた「歩行者に優しい道路基盤の整備」には大いに賛同するところです。しかしこうした現状を鑑みるに、やはり、それにはクルマや自転車がどう共存できるかという視点も必要ではないでしょうか。

 豊島区は池袋駅前の再開発にあたり「過度に自動車に依存しない、人と環境にやさしい交通環境」の実現を目指すとしています。これが単なる「クルマを過度に排除したことで、かえって不便で危ない街づくり」にならないことを、切に期待します。

【めっちゃ変わった…】これが「クルマが排除された」大塚駅の周辺です(地図/写真)

Writer:

1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。

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