戦艦の“神話”を打ち砕いた事件──先代「プリンス・オブ・ウェールズ」を沈めた日本海軍の衝撃

 イギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、「オペレーション・ハイマスト」と名付けられた長期展開の一環として、2025年9月頃まで横須賀に寄港しています。同艦と同じ艦名を持つ先代の「プリンス・オブ・ウェールズ」は、80年以上前の第二次世界大戦中に建造された最新鋭の戦艦の一つでした。そして1941年12月10日、この艦を巡り、当時敵対していた日本との間で、世界史的にも重大な出来事が発生しました。

実は日本海軍が攻撃実行前かなりの損害を覚悟していた!?

 この動きを受け、日本海軍は急遽、九六式陸上攻撃機および一式陸上攻撃機からなる航空戦力をかき集め、「プリンス・オブ・ウェールズ」を中核とする艦隊への攻撃を決断します。

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マレー沖で行動を共にした巡洋戦艦「レパルス」(画像:パブリックドメイン)

 しかし、この攻撃には大きな不安が伴っていました。というのも、航行中の戦艦を航空機で沈めることは不可能に近いという“信仰”のようなものが、当時の日本海軍内にも存在していたためです。実際、当初は連合艦隊司令長官・山本五十六ですら、「運が良ければ『レパルス』は沈められるかもしれないが、『プリンス・オブ・ウェールズ』はせいぜい大破が限界だろう」と予想していたといわれています。

 それも無理からぬことで、開戦前の研究報告には「航空機が、戦艦およびその随伴艦の対空砲火を受けながら攻撃を行った場合、攻撃隊の6割が損耗する覚悟がなければ成果は望めない」との分析もあったほどです。実際、当時の日本海軍の陸攻隊員たちもその報告を認識した上で、決死の覚悟で作戦に臨んでいました。

 ところが、いざ戦闘が始まると、ベトナムのサイゴン基地およびツドウム基地を飛び立った九六式陸上攻撃機・一式陸上攻撃機の計85機は、水平爆撃および魚雷攻撃によって、英国が誇る大型戦艦2隻をわずか3時間で撃沈してしまったのです。

【先代を忘れない】現在、空母「プリンス・オブ・ウェールズ」内にある先代艦(写真)

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