戦艦の“神話”を打ち砕いた事件──先代「プリンス・オブ・ウェールズ」を沈めた日本海軍の衝撃
イギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、「オペレーション・ハイマスト」と名付けられた長期展開の一環として、2025年9月頃まで横須賀に寄港しています。同艦と同じ艦名を持つ先代の「プリンス・オブ・ウェールズ」は、80年以上前の第二次世界大戦中に建造された最新鋭の戦艦の一つでした。そして1941年12月10日、この艦を巡り、当時敵対していた日本との間で、世界史的にも重大な出来事が発生しました。
航行中に撃沈された戦艦には「大和」「武蔵」も加わることに…
わずかな時間で2隻の戦艦が撃沈された理由としては、索敵の不備、艦載対空砲の不具合、そして、そもそも欧州戦線では航空魚雷を用いた航空機による攻撃が稀であったといった点が指摘されています。また、自国の雷撃機である、日本機よりもはるかに鈍足な「ソードフィッシュ」に対する訓練に慣れていたため、乗組員による対空砲火が日本軍機には対応しきれなかったという問題もあったようです。

とはいえ、最大の問題はやはり、護衛となる航空機が1機も同行しておらず、防空を担える駆逐艦もわずか4隻しか随伴していなかったことでした。この海戦を通じて、「いかに戦艦といえども、航空機の援護なしでは無力である」という現実が明らかとなり、日米両海軍は戦艦中心の戦術から、航空母艦を主軸とする戦闘様式へと大きく舵を切っていくことになります。
この戦いで攻撃を指揮し、終戦間際には最後の連合艦隊司令長官を務めることになる小沢治三郎中将(当時)は、「プリンス・オブ・ウェールズ」と運命を共にしたトーマス・フィリップス東洋艦隊司令官の死を悼み、「いずれ我々にも同じ運命が訪れるだろう」と語ったといいます。実際には、小沢中将自身はその運命を辿ることはありませんでした。しかし、その後、「航行中に航空機によって撃沈された戦艦」のリストには、日本海軍が誇る最新鋭艦「大和」と「武蔵」の名が、新たに刻まれることとなったのです。
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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