旧海軍屈指のブッ飛び設計戦闘機「震電」、現在は驚愕の姿に! “初飛行直後に終戦”のその後
実戦投入こそならなかったものの、そのユニークな設計で現代も根強い人気を持つ戦闘機「震電」。終戦後、この機体は「機首と前部胴体のみ」という形で、アメリカに展示されています。
なぜ「ちゃんと修復しない」状態で残っているのか
約20年前、倉庫に保存されている震電を筆者は見学したことがあります。その際、博物館員が言っていたのは、修復に際しては「かつてあったまま」に「歴史的意義のある機体」を戻すのを主眼としているとのことでした。
「かつてあったまま」というのは、それではどの時期を指すのでしょうか。工場を出た直後か使われている最中か、引退した時か、など様々な答えがありますが、震電に当てはめると、初飛行直後に終戦となったことからさほど時期を選ぶのには異論がないように思います。それでは、「歴史的に意義のある」はどうでしょう。
震電は日本で今も人気がありますが、先尾翼は技術的に理論が解明されているうえ、実戦経験はありません。
架空戦記になりますが、もし震電が予定通りに量産されて実戦配備され、これも開発に成功した旧海軍の烈風や旧陸軍のキ87といった戦闘機がアメリカの戦闘機を駆逐し、護衛を失ったB-29を震電が多数撃墜していたら……。震電は「アメリカの技術を上回った」戦闘機として修復されていたかもしれません。
こうしてみると、震電の前部胴体のみの展示は寂しくもあります。反面、世界の航空宇宙博物館の中でトップと言えるスミソニアン航空宇宙博物館に保存されているなら、機体の劣化が著しく進むとは考えられず、将来の復元に期待がかかります。いつの日か在りし日の姿に戻った震電が展示されるのを願うばかりです。
Writer: 相良静造(航空ジャーナリスト)
さがら せいぞう。航空月刊誌を中心に、軍民を問わず航空関係の執筆を続ける。著書に、航空自衛隊の戦闘機選定の歴史を追った「F-Xの真実」(秀和システム)がある。
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