「敗戦でお役御免となった旧日本軍戦車」驚愕の“第2の人生”って? 「更生戦車」復活までの道のり
太平洋戦争前の1930年代に開発・生産された旧日本軍の戦車を改造したブルドーザー「ハ号ブル」。NPO法人によって公開されたこの車両は、どのような経緯を持つのでしょうか。
北海道から御殿場へ 今後は旧日本軍の戦車とともに展示予定
運搬車となった更生戦車がいつ頃まで使われ続けたかは分かりませんが、1975年頃に次の3代目オーナーの手に渡ります。場所は北海道で、新しいオーナーは除雪などに使うために運搬車となった更生戦車を、再びブルドーザーに戻す改造を行います。

コマツ製ブルドーザーの排土板を取り付け、それを上げ下げするためのアームを新しく造り、動作させるための油圧システムも追加しました。オープントップ型の運転席には屋根とガラス窓を一点モノで制作して取り付けられ、個人のDIY改造ではありますが機能も外見も立派なブルドーザーであり、その後は2010年頃まで現役車両として使われ続けたそうです。
NPO法人は2023年にこの車両を3代目オーナーから譲り受け、後世に残すためにレストアを開始。再改造されたブルドーザーという経緯から「更生戦車」という名称は使わず、ベースとなった九五式軽戦車の愛称である「ハ号」と取って「ハ号ブル」という独自の名称を付けます。クラウドファンディングで募った資金を元に、約1年もの期間をかけて現在の状態に復元しました。
「ハ号ブル」は現時点では常設公開されていませんが、今後はNPO法人が御殿場市で開設を目指している防衛技術博物館において、九五式軽戦車とともに展示を行なう予定だそうです。
また、NPO法人では今年の4月に、アメリカより九七式中戦車改を帰国させ、こちらも走行状態にレストアを進めるそうで、今回のハ号ブルでの作業のノウハウがそこで生かされるそうです。
かつての日本で、戦後の混乱期に物資不足から行なわれた戦車の平和利用。その生き証人ともいえる戦車改造ブルドーザーは、今後も動く車両として後世に残されていくことになりそうです。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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