もう「天ぷら油」じゃない! 巻き返しを図る「次世代バイオ燃料」の正体 立ちはだかる“法のカベ”
エコロジーな未来の燃料として注目を集めた「バイオ燃料」が、近年さらなる進化を遂げています。特に対応へ積極的なのがマツダですが、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
そのまま給油しても、軽油と混ぜてもOKに!?
このHVO燃料に注目しているメーカーのひとつがマツダです。同社は2022年に発売した「CX-60」のディーゼルエンジン車から、HVOへの対応を開始しました。

このモデルにはHVOがそのまま給油でき、継ぎ足して軽油と混ぜてもOK。ユーザーが車両側に改造を施したり、何か設定を変更したりする必要はありません。
筆者(西川昇吾:モータージャーナリスト)は、実際にHVO燃料で走る「CX-80」に試乗しましたが、通常のモデルとの差は感じず、違和感も全くありませんでした。このように、どちらの燃料も使うことができるフレキシブルさは、HVO燃料の大きな魅力と言えます。
しかし日本ではまだHVOは普及していません。その理由のひとつが価格で、現状では通常の軽油の3~4倍の価格で販売されています。
また、法律上の規制も大きな課題です。HVOは日本の現行法において、そのままの状態では軽油として使用・販売することができません。そのため、例えばユーグレナ社のHVOバイオディーゼル燃料「サステオ」は、軽油49%とHVO 51%を混合することで、法規制をクリアしています。
一方、カーボンニュートラル施策に熱心な国の多いヨーロッパでは、HVO燃料の普及が進んでいます。HVO100%の燃料が通常のガソリンスタンドで販売されていることがあり、補助金の交付によって、販売価格も軽油より5%ほど高い水準で抑えられています。そのためヨーロッパ市場では、マツダ以外のメーカーもHVO燃料に対応した車種を展開しています。
クルマが取り組むカーボンニュートラルへの対応策は、電動化をはじめ様々なものがあります。なかでも、既存のディーゼルエンジン車でHVO燃料に対応していくことは、未来に向けた“現実的な”取り組みのひとつだと言えます。筆者も、HVO燃料が日本でも「次世代バイオ燃料」ではなく、一般的な燃料として早期に普及することを期待しています。
Writer: 西川昇吾(モータージャーナリスト)
1997年生まれ、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体、ファッション誌などで、新車情報からカスタムかー、旧車、カーライフお役立ちネタまでクルマに関して幅広く執筆。自身でのレース活動も行っている。
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