空自の次期戦闘機なぜ「アメリカ製」じゃない? 日英伊タッグ「GCAP」開発の真相 ブラックボックスを例えるなら“iPhone”その意味
航空自衛隊の次期戦闘機「GCAP」。なぜ今回はアメリカではなく、イギリス・イタリアと組むのでしょうか。そこには、単なる仲良しこよしではない、切実な「懐事情」と「自由」への渇望がありました。
GCAPは3か国によるドリームチームか?
現代の最新鋭戦闘機を作るには、莫大な費用がかかります。
たとえばF-35の場合、開発から維持まで含めた総コストは、プログラム全体で約2兆ドル、日本円にして300兆円を超える規模になるともいわれています。
日本の国家予算(一般会計)が約110兆円ですから、その3倍近くです。総事業費約650億円の東京スカイツリーなら、数千本建つ計算になります。
これほどの巨額負担を一国で背負うのは困難です。そこで、日英伊の3か国で開発費を「割り勘」することで、負担を減らしつつ最高性能を目指す道を選びました。
なお、アメリカが関与しないとは言っても、パートナー企業は超一流です。
イギリスからは、ロールス・ロイスやBAEシステムズが名を連ねています。前者は高級車の代名詞として有名ですが、実はボーイング787などのエンジンも手がける世界屈指のエンジン・メーカーであり、後者は欧州各国が共同開発した多国籍戦闘機ユーロファイターの開発に関与し、量産している実績あるメーカーです。
一方、イタリアからはハイテク企業の「レオナルド」が参加します。同社は民間・軍用航空機分野ではヨーロッパ随一、電子工学分野では世界でもトップクラスに位置づけられる企業です。前出のBAEシステムズとともにユーロファイター戦闘機の開発・生産を担っているほか、ターボプロップ旅客機のATRにも関与。さらに大小さまざまなヘリコプターの開発・生産を行っています。
そして日本からは三菱重工やIHIなどが参加します。
今回はどこか1国が主導するのではなく、これら3か国のトップ企業がそれぞれの最高技術を持ち寄り、機体もエンジンも一緒になって開発します。まさに各国のエースが集結したドリームチームといえるでしょう。
GCAPが完成するのは2035年の予定です。現在、F-2戦闘機に乗っているパイロットが退役し、いまの中学1年生が社会人になる頃、日本の空の守りは新世代へとバトンタッチされます。
日本の技術者たちが世界の一流メーカーと対等に渡り合う「モノづくりの挑戦」が、いま始まっています。





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