「ブルーインパルス」のルーツはライト兄弟が作った!?「歴史上の偉人」が生んだ知られざる「初めて」(後編)
ライト兄弟は、1903年12月17日に世界で初めて「制御された動力飛行」に成功したことで知られています。これだけでも歴史に名を残したといえるのですが、それ以外にもさまざまな航空分野での「初めて」を記録しています。
初の航空貨物輸送と軍事偵察飛行
ライト兄弟の飛行機は単純に飛ぶだけでなく、さまざまなことにも使われました。1910年11月7日、ライト・エキシビション・チームのパイロット、フィリップ・パーマリーはオハイオ州コロンバスにできた店の開店祝いとして、絹糸100ポンド(約45kg)を積んで、デイトンから国道沿いに65マイル(約105km)の距離を1時間足らずで飛行しました。これが世界初の飛行機による貨物輸送とされています。
パーマリーはそれ以外にも、1911年1月21日にアメリカ陸軍のポール・ベック中尉と飛行した際に29ポンド(約13kg)の無線機を搭載し、飛行する飛行機からの無線通信を世界で初めて実施しています。
3月3日には、メキシコ革命派を牽制する示威行為として、アメリカ陸軍がテキサス州南部のメキシコ国境地帯を舞台に実施した軍事演習において、ベンジャミン・フーロイス中尉とともに上空からメキシコの様子を探る、飛行機による世界初の軍事偵察飛行も成功させました。この飛行に使われた改良型の「ライト・モデルB」には、フーロイス中尉のアイデアで、世界初の航空機用シートベルトが装備されていたのも特筆されるでしょう。
このほかにもアメリカ大陸横断飛行や飛行中の爆弾投下など、いろいろな世界初を記録しているライト兄弟の飛行機ですが、技術の進歩は早く、ヨーロッパで開発された数々の飛行機によって優位性が失われてしまいます。
同時に飛行機の特許に関する訴訟が続き、衰弱した兄のウィルバー・ライトが1912年に死去、弟のオービルも1915年にライト社とその保有する特許をニューヨークの投資家グループに売却し、飛行機ビジネスの第一線から退きました。
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。





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