「ボックス席」もう風前の灯火!? そもそもなぜロングシートと混在していたのか? JR普通列車では“昔の構造”に
首都圏を走るJR線の普通列車は、かつてボックス席を主体とした車両が使われていましたが、今や通勤電車と同じロングシートのみの車両に置き換わりつつあります。なぜボックス席は減りつつあるのでしょうか。
「セミクロス」も混雑路線で消滅
セミクロスシートは首都圏では1936(昭和11)年に中央線急行電車(現在の中央快速線)に導入され、戦後は1951(昭和26)年に横須賀線の70系電車で導入されています。中央快速線の事例では、ロングシートの車両ばかりだった路線にセミクロスシートの車両が投入されたので、混雑の緩和よりはサービスの水準を上げる方が目的だったのかもしれません。しかし、第二次世界大戦中にロングシートへ改造されてしまいます。
このセミクロスシートの座席配置の電車は、形を変えて常磐線、東海道線、東北・高崎線にも導入され、常磐線では401系・403系・415系、東海道線では113系、東北・高崎線では115系でセミクロスシートの構造が採用されました。セミクロスシートを採用した中距離電車を指して、近郊形電車・近郊形車両とも呼ばれています。
しかし、通勤ラッシュがさらに激しくなるとセミクロスシートの座席配置でも対応できなくなり、ついに全面的にロングシートとした車両が導入されます。
国鉄は、1982(昭和57)年から415系500番代でロングシートとしています。東海道線では1985(昭和60)年から211系2000番代、さらに同年から東北・高崎線の211系3000番代でロングシートの車両を導入しています。
JR化後は113系や115系でもセミクロスシートの車両をロングシートに改造した車両が登場し、混雑に対処していました。
こうした取り組みでも混雑の問題が解消できず、1994(平成6)年から横須賀・総武快速線に導入されたE217系ではロングシートの車両が主体となり、ボックス席を備えた車両は成田空港方の3両だけに減っていました。また、E217系では片側4扉とし、一般的な通勤形電車の造りとなっています。以後のJR東日本の車両は通勤形電車と近郊形電車を統合し、一般形電車として2000(平成12)年にE231系が登場しています。
E231系もロングシートが主体で、ボックス席は編成の端に連結される車両の一部にとどまっています。まず東北(宇都宮線)・高崎線に導入され、次いで2004(平成16)年から東海道線に導入されています。
さらに、2007(平成19)年以降は輸送障害の対策を強化し、バリアフリー対応を深度化させたE233系に移行しています。E233系も基本的な客室設備はE231系と変わりなく、ロングシートが主体でボックス席を備えた車両は数少なくなっています。しかし、E233系は座席の座り心地が良くなっているほか、東海道線に導入されたE231系とともに冷暖房が強化され、暑さや寒さの対応にも改善が見られます。





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