「車庫前」なのに車庫がない!? バス停名が“亡霊化”する理由とは 「〇〇さん宅前」が許されるワケ
バス停の名前には不思議がいっぱいです。「車庫前」なのに車庫がない、なんてことは序の口。実は「〇〇さん宅前」なんて個人名のバス停まで存在します。誰がどう決めているのか、その知られざる裏側に迫ります。
変えるに変えられない? バス停名が”タイムカプセル”になるワケ
このように、バス停の名前は意外と自由に付けられている側面があります。
では冒頭の疑問に戻りましょう。なぜ、施設がなくなっても車庫前や水道タンク裏という名前は変わらないのでしょうか。
そこには、バス会社の切実な“ふところ事情”があります。名前を変えるには、想像以上に多額のコストがかかるからです。
バス停の名前をひとつ変えるだけでも、現地の標識ポールを書き換えるだけでは済みません。路線図の更新、車内放送の録り直し、運賃データの修正など、影響する範囲は多岐にわたります。
ある自治体の試算によれば、時刻表を作り直して必要なところに配布するだけでも約130万円もの費用がかかるとか。そのため、施設がなくなったからといって、おいそれと名前を変えるわけにはいきません。よほどのタイミングでない限り、古い名前がそのまま使い続けられることになるのです。
しかし、これは悪いことばかりではありません。結果として、バス停は街の歴史を現代に伝える「タイムカプセル」のような役割を果たすことになるからです。
たとえば長野県にある「女体入口(にょたいいりぐち)」というドキッとする名前のバス停。これは、かつて近くに存在した「女体」という集落の名残だといわれています。
地図からは消えてしまった地名や、かつてそこにあった施設の記憶が、バス停の名前にだけひっそりと刻まれて後世に残り続けます。
そう考えると、街で見かける「実態と合わない不思議なバス停」も、また違った風情を持って見えてくるのではないでしょうか。
Writer: 渡辺 勢(ライター)





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