ヤマハの「通勤快速」かれこれ44年!? 泣かず飛ばずの“大人向けモデル”から大出世したワケ

ヤマハのスクーター「シグナス」シリーズ。いまや「通勤快速」のスポーツスクーターとして人気ですが、当初は全く違うコンセプトで、ヒットにも恵まれませんでした。40年以上にわたる歴史の中で、どのようにして人気モデルへと変貌を遂げたのでしょうか。

「通勤快速」の威名はさらに進化 水冷エンジン搭載へ

 この反響を受け、2004(平成16)年にはさらにスポーツ性能を高めた「シグナスX SR」が発売されます。同時期からカスタムパーツなども続々と登場し、シグナスが持つ加速性能をさらに高めようとするユーザーも出始め、「スポーツスクーター」として熱い視線を集めるようになっていきました。

 2005(平成17)年にはインジェクション仕様の台湾仕様車「シグナスX FI」が台湾で発売。2007(平成19)年にはこのモデルを日本仕様にセッティングし直した新作のシグナスXも発売されました。ちなみに、パワフルな台湾仕様のシグナスは「台湾シグ」の名で、当時ユーザーの間で特別視されていました。シグナスシリーズの黄金期は、まさにこの2007年モデルの時代だったと言えるでしょう。

 シグナスシリーズは2010年代に入ってからも進化を続けます。2015(平成27)年にモデルチェンジとなった「シグナスX SR」は、フロント・リアともにディスクブレーキを採用した一方、軽量化も行われヒットモデルとなりました。

 また、2018(平成30)年にはマイナーチェンジが行われ、フロントのディスクブレーキにABSまたはUBS(前後連動ブレーキ)が採用され、灯火類がLED化されるなど、より現代的で合理的な仕様へとアップデートされています。

 そして、2021年に発売となったのが現行モデルにつながる「シグナス グリファス」です。シグナスシリーズでは初となる水冷エンジン「BLUE CORE」を搭載し、可変バルブ機構によって低速域から高速域に至るまでパワフルな加速性能を実現。シグナスX時代から持っていた「通勤快速」の威名を、さらに高めたモデルとなりました。

 以降、グラフィックを変更した限定モデルなどが発売され、最新モデルは2025年のカラーリング変更がなされたタイプです。ヤマハではこの最新シグナス グリファスの特徴として「『日常の扱いやすさ』を考えた走行性」「日常使いをスマートにアップする充電機能や多彩な収納」を挙げていますが、そのパワフルな性能は健在で、ヤマハらしいキビキビとした走りが一番の人気の理由と言えるでしょう。

 ここまで見てきた通り、当初は前代未聞の「スクーターにしてツアラー」というコンセプトで登場したシグナスでしたが、台湾ヤマハが生産を行うようになって以降、スポーツスクーターへと大きく舵を切り、結果的に絶大な支持を得るようになりました。

 初代シグナスの開発者は、このような変遷を思いも寄らなかったと推測されます。それでも40年以上にわたるロングセラーに至ったのは、当初ヒットに恵まれなかった初期シグナスを、簡単に生産終了としなかったヤマハのプライドがあったからこそかもしれません。シグナスの歴史が、半世紀を超え、さらなる未来へと続くことが期待されます。

【初代は全く“通勤快速”っぽくない!?】シグナスの歴史を写真で振り返る(画像)

Writer:

1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。

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