「国産初」はずっと現役! 「日本最大級」は軍の要請!? 鉄道の“古参トラス橋”を空から愛でる
日本の鉄道には数多(あまた)のトラス橋が使用されています。その中から、明治期の輸入トラスや日本最大級を誇る大型トラスなど、特徴的な鉄道橋を空撮写真とともに紹介します。
今はなき明治期のトラス橋
明治期のトラス橋は、九州の肥薩線「第一球磨川橋梁」「第二球磨川橋梁」がありました。過去形で語るのは残念なのですが、2020年7月の熊本豪雨により球磨川が氾濫し、両橋梁は流出してしまったのです。第一球磨川橋梁は2連のトラスのうち1径間が流されずに残り、第二球磨川橋梁は全橋梁が流出。球磨村は災害遺構として橋梁の一部を保存展示する予定です。肥薩線は復旧が決定し、両橋梁とも2026年度から嵩上げする形で新規に架橋する予定で、準備工事に入りました。
第一球磨川橋梁と第二球磨川橋梁はアメリカからの輸入で、製造元はアメリカン・ブリッジ社(AMERICAN BRIDGE Co.)製です。架橋は1908(明治41)年。トランケートトラスと呼ぶ種類で、切り詰めるという意味のトランケート(truncate)からきています。トラス橋は通常端柱が斜めですが、この種類は左右片方の端柱が垂直と斜めとちぐはぐになっています。これは橋梁を斜め位置で架橋する際に用いられました。
肥薩線は8620形「SL人吉号」が走り、明治期の橋梁は名撮影地としてその名を馳せていました。今となっては思い出となりますが、新しい橋梁として復活し、球磨川に鉄路の息吹が戻ってくることを願ってやみません。
最後は大型のトラス橋を紹介します。近鉄京都線の向島~桃山御陵前間の宇治川には、1928年に架橋された支間164.6mの澱川橋梁があり、1径間の単純トラス橋としては日本最大の長さを誇ります。戦前に架けられた大型単純トラス橋の長さは、現在でも破られていません。
この橋はトラスが長くなるため、部材を複雑に分格させて部材を短くした分格トラスを採用し、分格トラスのうち上弦材が曲弦となるペンシルバニアトラスという種類となります。構造はトラスの斜材に垂直部材と並行部材を付け足すことで、各部材が短くなって長径間での歪みを抑えています。
京都線の前身である奈良電気鉄道は、奈良~京都間を建設する際に、宇治川の架橋予定地が陸軍工兵部隊の演習地と重なるため橋脚の設置は陸軍から1基のみ許可され、なおかつ1928(昭和3)年に京都御所で昭和天皇即位大典が開催される前の開業を迫られ、橋脚を使用しない大型トラス橋を建設することとなりました。
宇治川の川幅を1径間で跨ぎつつ、複数両を連ねた編成単位の電車を支えるため、重量物を見込んで余裕ある設計にしたところ、この大きさが必要だったのです。そのおかげで戦後の車両大型化でも問題なく支えられ、架け替えられず今日に至っています。
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。日本写真家協会(JPS)正会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。





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