塗料が作れないかも――ホルムズ海峡危機が“造船”を直撃 原料価格2倍も 「商売が成り立たなくなる」
中東情勢の緊迫化で、日本の造船業に影響がじわりと広がっています。常石グループの会見では、船体の建造や維持に不可欠な塗料の原料が供給できなくなる可能性が語られました。
原油危機は「化学製品危機」の様相に
影響は燃料だけでなく、冒頭のとおり船の建造に不可欠な塗料にも及んでいます。奥村社長は、塗料の溶剤としても使われるシンナーの供給不足に強い懸念を示します。
「特に今言われているのがペイントだ。ナフサ由来のシンナーが作れず、ペイントが供給できなくなるのではないかとメーカーの方から話を聞いている。まだフォースマジュール(不可抗力)を出すところまでいっていないが、長期化するとメーカーがフォースマジュールを宣言するような事態もあるかもしれない」(奥村社長)
シンナーは、原料を供給する石油化学メーカー、溶剤を調達・販売する商社、塗料・シンナーを製造するメーカー、それを仕入れて販売する卸や小売事業者、そして実際に現場で使う塗装業者という多層的で複雑なサプライチェーンを構成しています。石油化学メーカーではトルエンやキシレンといった溶剤の供給を行っていますが、一番川下に当たる塗装業者では塗料・シンナーが手に入りにくくなっているのが現状です。
政府は「日本全体の石油供給は足りているが、流通段階で目詰まりが発生している」と認識しており、シンナー不足に関しては経済産業省が事業者と協力しながら、目詰まり箇所の特定と改善を急いでいます。
実際、塗料大手の関西ペイントが「中東情勢に起因し、安定供給のための原材料確保等が極めて困難」な状況であることからシンナー製品全般の出荷統制と50%以上の価格改定を実施しました。最大手の日本ペイントグループも塗料の値上げは行っていないものの、原材料価格そのものが高騰しているシンナー製品に関しては価格改定による値上げと出荷調整を行っています。
中東情勢の不安定化はヘリウムやアルミニウムの調達にも波及しており、電子機器や資機材価格がさらに上昇することで、船舶の建造コストが悪化する可能性も十分にあるでしょう。
奥村社長は「ホルムズ海峡の封鎖が長引くと、我々造船・海運だけでなく、ほかの業界も一緒だとは思うが、商売が成り立たなくなる。早く解決してほしい」と話しました。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。




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