撃墜されたパイロットを守る「最後の武器」とは? 宇宙にも携行した“サバイバル道具” ただし日本は大違いだった
敵地で撃墜されたパイロットが携行するサバイバルキットには、専用の銃が含まれることがあります。それは単に敵と戦うためだけでなく、生き残るための「お守り」としての重要な役割も担っています。
日本は銃の代わりに……
では日本はどうでしょうか。航空自衛隊のパイロットが携行するサバイバルキットには銃は含まれていません。その代わりに釣り具などが装備されています。専守防衛で、基本的に敵地で活動しない、日本周辺が海であるという運用環境を反映したものです。また、アメリカ軍ほどの戦闘捜索救難(CSAR)体制はありませんが、世界でも唯一無二の救難飛行艇US-2など救難体制は整えられています。
こうして見ていくと、撃墜されたパイロットが携行する銃のイメージは、映画や小説とは異なります。最優先は敵と戦うことではなく、発見を避け、救助までの時間を稼ぐことです。銃を使う状況そのものが、すでに極めて危険な段階にあるといえるでしょう。
それでも銃が携行される理由、それは心理的な側面にあります。「最後の抵抗手段」を物理的に携行しているという実感は、極限状況での士気を支える大きな要素になります。言い換えれば、それは“武器”であると同時に“お守り”でもあるのです。
4月6日の救出作戦の全貌は不明ですが、トランプ大統領の演説によれば爆撃機4機、戦闘機64機、給油機48機、救助機13機、人員数百名を投入、6か所以上の地域で陽動作戦を実施、CIA(アメリカ中央情報局)の支援も受けるという大規模な物で、作戦中複数の機体が失われるという損害も出しています。
パイロットのサバイバルは、個人の人身問題にとどまりません。撃墜されたパイロットが敵国に拘束され、国際政治のカードとして扱われた例は少なくありません。
1960年に発生したU-2撃墜事件では、パイロットの生存と拘束が米ソ関係を大きく揺るがしました。撃墜されたパイロットの運命は、ときに国家間の緊張や外交交渉を左右する存在にもなり得るのです。
いくら国家が総力を挙げて救出体制を組んでも、パイロット本人の心が折れてしまってはサバイバルもおぼつきません。撃つためではなく、心理的お守りであるサバイバル専用銃。それはパイロット個人の運命と国家の意思と責任、世界の動きにもつながっている過酷な現実の象徴です。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。





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