引退じゃなかったの!? 新幹線で「唯一」をたくさん生んだE3系 その異端の道を振り返る
新幹線のE3系電車は、2025年の営業運行終了後も「荷物専用新幹線」に改造されるなど、話題の尽きない車両です。新幹線唯一の観光列車である「とれいゆ」と「現美新幹線」も含めて紹介します。
「足湯」「美術」の新幹線に改造
山形新幹線用E3系は、2014(平成26)年より山形県知事の要請で塗装変更を実施。同県出身の工業デザイナー・奥山清行氏によって、白を基調に紫や黄色を配した新塗装に変わりました。
奥山氏は同時期に、E3系700番台「とれいゆ」も手掛けました。0番台を元に、新幹線で初めて全車両を本格的に改造した観光列車です。「とれいゆ」とは「トレイン」(列車)と「ソレイユ」(太陽)を組み合わせた造語で、「トレイン内の足湯」を備えるという同列車の特徴も表していました。
11号車は元グリーン車の設備をそのままに普通車指定席としたお得感のある車両。12~14号車は2+1列にボックスシートを配置した「お座敷指定席」で、畳敷の座面に座布団が置かれていました。新幹線普通車の2+1列配置は、2026年現在でも「とれいゆ」以降見られません。15号車は「湯上りラウンジ」と名付けられたフリースペースで、売店機能もありました。16号車には「くつろぎの間」として足湯が設けられ、景色を眺めながら足湯を楽しめました。
この編成は「とれいゆつばさ」として、福島~新庄間の山形新幹線区間を中心に運用され、イベント時には首都圏まで顔を見せることもありました。2022年まで活躍したのちに、引退しています。
また、2016(平成28)年には、0番台の1編成が新幹線観光列車「現美新幹線」へと改造されます。写真家の蜷川実花氏が外観デザインを担当しており、車両全体に長岡の花火が描かれたアーティスティックな車両でした。
「世界最速の芸術鑑賞」として、元グリーン車の11号車以外は、現代美術を展示する美術館に改装。13号車にはカフェとキッズスペースが備えられていました。通常はE3系の走ることがない上越新幹線の越後湯沢~新潟間で運行されたのも特徴でした。この「現美新幹線」は2020年に引退しています。
筆者は「とれいゆ」と「現美新幹線」に、JR東日本の企業としての底力を感じましたし、その引退はとても残念でした。現在、新幹線観光列車の系譜は途絶えたままですが、魅力ある列車の登場を期待させる車両だと今でも思います。
E3系自体も、0番台はE6系新幹線の登場を受けて2014(平成26)年に秋田新幹線から撤退(車両自体は2021年まで運用)。1000番台もE8系新幹線の登場で2024年に引退しました。最後に登場した2000番台は2025年に運用終了となり、予備車として残存しています。
通常はこれで幕引きとなりますが、E3系の歴史は続きます。2000番台の1編成が座席撤去、床面フラット化、滑り止め加工などの改造をした上で「荷物専用新幹線」の試作型とされたのです。最大積載量は段ボール1000箱分の17.4tで、2026年3月から東北地域の特産品などを東京に届けています。
E3系がJR東日本の新幹線で唯一の観光列車、荷物専用新幹線となったことは、今後も語り継がれるでしょう。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。





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