山手線・新幹線の自動運転、実現への課題 昔からある技術、しかし導入が難しい理由とは

「あとから導入」の問題

 現在、無人自動運転を行っている路線は、全て高架橋やトンネルになっています。踏切は無く、一般の人が線路に近づくことは、ほぼ不可能です。駅のプラットホームもホームドアが設置されていて、客と線路を完全に分離。通常の鉄道以上に不意のアクシデントが発生しにくい環境になっています。というより、これらの路線は最初から無人自動運転の導入を前提に設計、建設されたのです。

Large 180813 autopilot 02

拡大画像

無人自動運転はゴムタイヤで走る新交通システムなどを中心に実用化されている。写真は新交通ゆりかもめ(2014年1月、草町義和撮影)。

 一方、JR東日本は現在営業中の路線を無人自動運転に切り替えることを考えているようです。仮に新交通システムなどと同じ方式の無人自動運転を実現させようとするなら、線路やホームを造り直さなければなりません。

 道路との交差は立体化して踏切を無くす必要がありますし、線路のそばに道路や民家があるような場所では、絶対に無断侵入できないような巨大な壁を建設しなければならないでしょう。駅のホームドアはもちろん必須。場合によっては、天井まで伸びる背の高いホームドアも必要でしょう。これらの改修費用は相当な巨額になると思われます。

 ただ、近年は自動車でも自動運転技術の研究や開発が進んでいます。不意のアクシデントが発生しやすい道路では、鉄道以上に高度で複雑な自動運転システムの開発が不可欠。逆に言えば、これが実用化されて鉄道に応用すれば、踏切での自動車の侵入などにも対応しやすくなり、施設の大幅な改修は不要になるかもしれません。

 交通安全環境研究所の理事などを務めた東京大学大学院の水間 毅特任教授は、学会誌『計測と制御』2017年2月号の記事で「(自動車の自動運転システムが)安全に実用化されるならば、これらの技術を鉄道に適用することはメリットが大きいと考えられる」と記しています。JR東日本も自動車の自動運転技術を応用し、施設の改修を最小限に抑えようと考えているのかもしれません。

 日本では少子高齢化が進み、JR東日本に限らず無人自動運転を視野に入れた検討が必要な時期になったのは確かです。同社の動きがほかの鉄道会社にも波及するのかどうかが、今後の焦点となりそうです。

【了】

この記事の画像をもっと見る(3枚)

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

9件のコメント

  1. >JR東日本も自動車の自動運転技術を応用し、施設の改修を最小限にと考えているかもしれません。
    鉄道会社が、自動運転車の研究をしているトヨタやGoogleなどの企業に「車より鉄道の方の研究を先に」なんて言える訳が無いですしね。
    逆の立場で自腹で開発費を出して研究している事に対し、赤の他人の研究をやれと言われる筋合いも無い。
    とはいえ、鉄道の無人化への研究も少なからず費用が掛かるので自動車メーカーのように毎年1000億単位の研究費を捻出する余裕はJRクラスの大企業であってもとても無い。
    そこで、自動車メーカーなどが研究した成果の自動運転技術を応用し、研究費を抑えて導入する訳ですね

  2. 7月にJR東日本が公表している経営ビジョン「変革2027」にしっかりと「ドライバレス運転の実現」って書いてあるのに、1ヶ月以上遅れてさも独自取材のように記事にする新聞社もどうかしていると思う。

    それはそれとして、鉄道の自動運転は高架など完全に他交通と分離できる路線なら自動車より遥かに実現しやすいはずなので研究は進めてもらいたいですね。当然ホームドアの整備もセットになるでしょうから。
    (自動車の自動運転技術はあまり鉄道には応用できないと思いますけどね…走る環境があまりにも違いすぎますし、新幹線や山手線ならば既にデジタルATCで減速の制御ができますから)

    • 他にも何年も前から知られていることを、さも最近分かったかのように記事にするのは、残念ながらここではよくあることです。

  3. つくばエクスプレスも自動運転なんですが…

    • つくばエキスプレスは踏切が無いしホームドア普及済みだし新設路線だし(車輪が鉄かゴムかを気にしない人たちの目には)普通の鉄道よりもずっと舎人ライナーやゆりかもめ等に近いイメージですものね。

  4. >仮に新交通システムなどと同じ方式の無人自動運転を実現させようとするなら、線路やホームを造り直さなければなりません。

    山手線は、ホームドア設置が進んでいますよね。渋谷駅など大規模再開発待ちの駅はありますが…。

    むしろ問題は、山手線で唯一残された「第二中里踏切」ですかね。あそこは立体交差にするのは大変そう…。

  5. いまでは技術の発達により、「普通の鉄道」でも運転士を「支援」するタイプの自動運転システム

    ↑これってATOでは?
    1970年代に各地の地下鉄等で導入されたものの、設備の維持更新費用が高かったり運転士のモチベーションの問題等で大部分が撤去されましたが。

    • ATOは廃止された路線なんてごく僅かで殆どが現役だと思いますがどこの国の話をされてます?

    • 停車時限定ではあるけど、TASCもそうでは?