対怪獣のお約束「多連装ロケットシステム」の広がりゆく役割 島しょ防衛で艦載運用も

湾岸戦争で大火力を発揮したことで知られ、映画『ゴジラ』シリーズにも幾度か登場する「多連装ロケットシステム」。最初の量産モデルが登場しておよそ40年、担う役割も広がっており、総火演でもその一端が垣間見られました。その変遷を解説します。

島しょ防衛でも活躍することに?

 実は、近年陸上自衛隊は、このM270を島しょ防衛にも活用しようと考えているようです。たとえば、2018年8月に東富士演習場で行われた陸上自衛隊の実弾射撃演習である「総火演(富士総合火力演習)」では、M270が12式地対艦誘導弾(陸地から洋上の敵艦艇を攻撃するミサイル)と共に島しょ部へ接近してくる敵艦艇を攻撃する場面が展示されたり、2014年に九州などを中心に実施された演習である「鎮西26」では、海上自衛隊の輸送艦「しもきた」の甲板上からM270が射撃体勢をとっている様子が公開されたりしました。

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陸上自衛隊の多連装ロケットシステム 自走発射機M270。おもに遠距離の広域目標を瞬間的に撃破することを目的としている(画像:陸上自衛隊)。

 前者の総火演のシナリオは、島しょ部に事前に展開したM270が、侵攻してくる敵の艦艇を攻撃するというものですが、ひとつ重要なポイントとして、M270が装備するM31では移動している敵艦艇を精密攻撃することができません。たしかにM31は先ほど説明したようにGPS誘導による精密誘導攻撃能力を有していますが、それはあくまで敵が静止している場合の話です。たとえるならば、非常に正確なボールを投げるピッチャーでも、ボールを投げた後にキャッチャーが移動してしまえば、投げられたボールがキャッチャーのミットに収まることがない、というような具合です。こうした理由から、おそらくM270が狙うのは島しょ部に送り込む上陸部隊を船から降ろすために沖合にとどまっている、揚陸艦や輸送艦などではないかと思われます。

 一方で後者のシナリオでは、上陸部隊を支援するために、輸送艦の甲板から島しょ部の敵部隊に対してロケット弾を発射するというものですが、この「鎮西26」では実際の射撃は行われませんでした。しかし、2017年にアメリカ軍が行った訓練では、実際にアメリカ海軍の揚陸艦の甲板上から、アメリカ海兵隊が保有する軽量型M270ともいうべき装輪(タイヤ)式多連装ロケットシステムである「高機動ロケット砲システム(HIMARS)」がロケット弾を発射し、見事70km先の標的に命中させることに成功しています。HIMARSとM270が使用するロケット弾は共通なので、これは主語をM270に置き換えても問題なく成立する話です。こうした輸送艦からのロケット弾発射は、M270によってスペースを占有され、輸送艦にヘリコプターなどが着艦できなくなるといったデメリットも生まれますが、上陸部隊を強力な火力で援護できるといったメリットを考えれば、これは致し方ないことかもしれません。

 このように、陸上自衛隊のM270運用は、いまや島しょ防衛をも踏まえたものになりつつあるようです。

【了】

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