JRでも開始 貨物を旅客列車で運ぶ「貨客混載」、ローカル線の新たな収入源に

貨客混載が地方を中心に広がる事情

 貨物の量にもよりますが、鉄道の旅客車両内に貨物を載せる場合、貨物が振動などで倒れて客にぶつかることがないよう、安全対策を徹底しなければなりません。

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北越急行ほくほく線で行われた貨客混載の試験運転の様子。110km/hの速度域から非常ブレーキをかけてもボックスは動かなかった(2016年11月、草町義和撮影)。

 北越急行の場合、宅配荷物専用ボックスをベルトで固定するための装置を設置。記者(草町)が2016年11月に取材した試験運転では、110km/hの速度から非常ブレーキをかけて列車を意図的に揺らし、ボックスが転倒しないかどうかチェックしていました。

 こうした対策に手間やお金がかかるにも関わらず、なぜ貨客混載が地方の鉄道路線で広がりを見せているのでしょうか。大きな理由としては3点挙げられます。

 ひとつ目はトラックの「運転手不足」です。国土交通省と厚生労働省が2015年にまとめた資料によると、「道路貨物運送業就業者は全産業の平均に比べ若手就業者の割合が低く、その差は拡大傾向」「中長期的に、高年齢就業者の割合が急速に高まる一方、若手・中堅層が極端に少ないといった年齢構成の歪みが顕著になる懸念」があるといいます。

 現状のまま推移すれば、そのうちトラックを比較的長く運転できる人がいなくなってしまいます。そこで鉄道などで運ぶ距離を少しでも増やし、トラック運転手の負担を少なくしようというわけです。

 しかし、貨物を運ぶために貨物列車を新たに運行したりすると、相当な費用がかかります。そこで出てくるふたつ目の理由が「余力活用」。ローカル線の場合は沿線人口が大幅に減り、ローカル線を走る旅客列車の車内もスペースに余裕があります。空いたスペースに貨物を載せれば、列車を増やすことなく貨物を運ぶことができるのです。鉄道会社には貨物の運賃が入りますから、経営が厳しいローカル線の維持にも役立ちます。

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コメント

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3件のコメント

  1. 路線の最大乗車率によるが、車載の「宅配ボックス」もありってことだろうか? 牧歌的な表現をすれば、田舎の祖父母さんが週初に病院に行く途中で上り列車の「ボックス」で都会の孫への荷物を預け、週末の下り列車の「ボックス」で孫からのお返しを受けとるとか。……銭湯の個人ロッカーみたいだ。

  2. 例え貨物運賃収入自体は少なくても 鉄道存在の付加価値が高まるので貨客混載事業は大いに意義がある。

    貨客混載も進めることでJRなど旅客鉄道事業者は堂々と 赤字でも鉄道を維持発展できるような会計制度の提案を社会に行っていいと思う。 鉄道などの公共交通を赤字黒字だけで判断する会計や考え方を見直す時期だ。

  3. ローカル線を維持するとなれば、やっぱり地域に特化したサービスを充実させる必要があるでしょうし良い事ですよ。
    地方の人口減少が進んでいるのでこういう対策をとっても将来的に行き詰ることにはなるでしょうけど、せっかく鉄道路線が通っているのにうまく活用できていない所がほとんどな気がしましたしね。