陸自水陸両用車AAV7、災害時の使用が実際には難しいワケ 演習はすでに開始、課題は?(写真12枚)

島しょへの上陸などに使用される陸自のAAV7こと「水陸両用車」は、災害時の活用も期待されます。そうした想定の訓練はすでに開始されていますが、実際に出動となると、まだ解決すべき課題がありました。

瓦礫の海でスクリュー船はなぜ厳しい?

 2018年11月9日から11日までのスケジュールで、陸上自衛隊東北方面隊が主催する大規模実動演習「みちのくALERT(アラート)2018」が東北地区全域にて実施されました。

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「みちのくALERT2018」で北泉海水浴場(福島県南相馬市)に上がった水陸両用車。後ろはブルドーザーを運んできた後続のLCAC(月刊PANZER編集部撮影)。

 今回の演習で注目が集まったのは、新編されたばかりの陸上自衛隊「水陸機動団」から「水陸両用車(AAV)」(以下「AAV7」)が九州より遠路参加し、東北地方に初めて姿を現した点です。「四方を海に囲まれた国土、また数多くの島しょ部を有する我が国の領土を、他国に侵略された際に海上から迅速に機動展開し奪回すること」(水陸機動団公式ウェブサイトより引用)を目的とする水陸機動団ですが、同時に「災害派遣においても、海上からの迅速な救援活動など、幅広い活動に従事する」(同サイトより引用)こともうたっており、今回は震災実動演習なので、島しょ防衛としてではなく災害救援として、福島県南相馬市の北泉海水浴場に上陸展開しました。

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「みちのくALERT2018」で北泉海水浴場に上がったAAV7。奥に写るのは母艦としてAAV7やLCACを運んできた海自輸送艦「おおすみ」(月刊PANZER編集部撮影)。
東日本大震災の行方不明者捜索で養殖用いかだを捜索する海自潜水隊員。被災水域にはがれきや漁網が多数ただよい、捜索を困難にさせていた(画像:防衛省)。
2011年3月、気仙沼大島に接岸した強襲揚陸艦「エセックス」搭載の揚陸艇(画像:アメリカ海軍)。

 2011(平成23)年3月に起きた東日本大震災において、東北地方の太平洋側は甚大な被害を受けました。橋は寸断し、フェリーなど海上交通は壊滅状態で、沿岸の大小様々な島々へは、救援に駆け付け難い状態が続きました。

 特に宮城県気仙沼市の沖合にある気仙沼大島は、島内に約3000人が暮らす東北地方最大の有人島で、本土(気仙沼市)との交通は定期船(旅客船とフェリー)で結ばれていましたが、津波で船は流され(小型の臨時船のみ沖に逃げて無事)、なおかつ本土と大島の双方の港湾機能が喪失した結果、孤立状態に陥ったのです。

 そのため日本側の要請で、島にはアメリカ海軍の強襲揚陸艦「エセックス」で海兵隊が上陸することになりました。しかし、島に部隊を揚陸させる際に問題となったのが、周辺に漂う瓦礫でした。揚陸艦は沖合に展開するため、そこから島へは小型の揚陸艇が、人員や重機を乗せて運びます。しかし魚網などがスクリューに絡まると最悪エンジン停止に繋がるため、まずそれら瓦礫の撤去から行う必要がありました。

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1件のコメント

  1. 確かに高額装備だから災害出動を主とした配備は出来ないでしょう。

    現場の自衛官の方々の負担が増す様で有れば逆効果なので、無理しないで有効活用して頂きたいです。