戦車のエンジンと燃費の悩ましい話 悪さはお察し、安全と実用性で紆余曲折の100年
昨今のクルマに比べ戦車の燃費が圧倒的に悪いのは言うまでもありません。とはいえ決して放置されてきたわけではなく、人類の英知を振り絞って工夫してきた結果があっての現状です。その紆余曲折の歴史を振り返ります。
戦車はどのようなエンジンを積んでいるの?
昨今(2019年現在)の自動車業界を見ると、電気自動車、ハイブリット車、低燃費車と、エコを売りにしたクルマが次々と登場しており、そのように燃費を抑えて長距離走行する技術を進歩させるため、各メーカーは研究に余念がありません。現在、そしてこれからも「燃費」は、ユーザーがクルマを購入するうえで最も考慮するテーマのひとつでありつづけるでしょう。
では、戦車の燃費はどうでしょうか。何十tもの巨体を動かすエンジンを搭載しているのですから、少なくとも燃費が良いイメージを持つのは難しいでしょう。
そもそも、戦車はどのようなエンジンを積んでいるのでしょうか。
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戦車の歴史から見ると、多種多様な戦車が登場した第2次大戦時は、ガソリンエンジンが主流でした。軽量・小型・高出力のエンジンを求めた結果、航空機用のレシプロエンジン(ピストンがシリンダー内で往復復動するエンジンのこと)を基にして戦車用エンジンとして流用するケースが多かったためです。しかし、戦車用ガソリンエンジンは燃費が悪く、被弾時に燃料タンクに引火すると火災が発生し、多大な被害が生じるといった問題がありました。
一方、ディーゼルエンジン搭載戦車も、数少ないながら存在しました。ディーゼルエンジンは軽油が燃料ですが、ガソリンエンジンと比べると燃費がよく、なおかつ引火し難いのが特徴です。ただし、エンジンが大型化しスペース効率に劣る、そして振動や音が大きいという欠点もありました。
それでも上述したメリットを鑑みて、1935(昭和10)年ごろには、日本の八九式中戦車(空冷ディーゼル)とポーランドの7TP軽戦車(水冷ディーゼル)が相次いで登場しており、第2次大戦に入ると、ソ連や日本の戦車はディーゼルエンジンが主流になっていました。
そして、戦後は燃費の良いディーゼルエンジンが注目され、今日にかけて戦車用エンジンの主流となっています。
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そうしたなか、ソ連は戦後、ジェット機と同じガスタービンエンジンの研究・開発を進め、後にT-80で搭載しています。アメリカも、主力戦車のM1「エイブラムス」にガスタービンエンジンを採用しました。またスウェーデンのStrv.103(通称「Sタンク」)やフランスの「ルクレール」は、ディーゼルとガスタービンの長所短所を補完しあうために、あえて両者の複合型(ハイブリッド・エンジン)を搭載しています。
以前読んだ高校生が90式戦車を乗り逃げする小説の後書きで、著者が取材した際に給油口の場所は教えてもらえなかったとか。
一応そのような事態への考慮はあるようです。