航空会社の「マイレージサービス戦争」過熱 戦場は空からウェブへ 利用者は何を得る?
サービス本来の目的は「上級顧客の囲い込み」
一方、利用者からすると、ANA、JALのコードシェア便に搭乗すればマイルの獲得や使用における混乱はないものの、コードシェアとならない以遠便(相手国からさらに別の国へ運航する便)や、相手エアラインの便(そのほうが運賃が安い場合が多い)を利用する場合には、マイルの獲得・使用ルールのみならず空港ラウンジの使用、手荷物許容量の緩和といったサービスレベルが異なったり、使えなかったりすることもあるため、エアラインごとに十分な事前確認が必要になります。こうした複雑なルールが、「マイル王決定戦」の難問クイズにも使われるわけです。
ところで、いまやANA、JALともマイレージ会員数は約3300万人とされ、多くの人がどちらか、もしくは両方のカードを持ちマイルを貯めています。なかには「陸(おか)マイラー」と称し、ポイントサイトなどをフル活用して、飛行機に乗らずとも年に10万マイル以上を稼いで海外旅行をゲットするような人もいますが、業界でFFP(Frequent Flyer Program)と呼ばれる、こうしたマイレージサービスは、単に「より多くの一般消費者を自社に引き寄せる」ことを目的としたものではありません。
「20%の高頻度・高価格旅客が80%の収益をもたらす」という「パレートの法則」(イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱)にもとづいて、1981(昭和56)年にアメリカン航空が始めたFFPは、やがて世界に拡がります。日本でも、ANA、JALは「会社が支払うから上級クラスを使うビジネス族」や、高いサービスを自前で買える富裕層を自社に囲い込んで収益性を高めることを最大の目的として制度を整備してきました。「ダイヤモンド」会員など最上級のステイタスに対するおもてなしの中身が群を抜いて質が高いことがそれを物語っていますし、上級クラス席を持たない新規航空会社やLCCがFFPに投資をしないのも、また当然かつ合理的なのです。
他方、ANA、JALが年に数回だけの飛行機利用者に対して積極的に手を打たないかというと、ここ10年間で風向きに変化が見られます。それは日本における新規航空会社やLCCの登場とも関連しており、運賃の自由化が進むことで低運賃旅行の裾野が拡大、マイレージ会員数もここ15年間で3倍に増加するといった環境変化を踏まえ、両社は「ロングテール」戦略を考えざるを得なくなったものと思われます。
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