梅田と直結「阪急大阪空港線」実現の可能性は? 整備効果や採算だけじゃない課題

古くから構想はあるものの…

 伊丹空港と大阪の中心部を直接結ぶ鉄道は、1950年代から幾度となく検討されてきました。たとえば1971(昭和46)年、運輸大臣の諮問機関だった都市交通審議会が関西圏の鉄道整備基本計画を取りまとめ、大阪市営地下鉄(現在の大阪メトロ)四つ橋線を延伸する案を盛り込んでいます。

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伊丹空港の周辺は市街化が進んだ(2009年11月、伊藤真悟撮影)。

 1989(平成元)年には、兵庫県伊丹市がJR福知山線(JR宝塚線)から分岐して伊丹空港に乗り入れる新線「大阪国際空港広域レールアクセス」の構想を打ち出しました。2004(平成16)年に近畿地方交通審議会(国交省近畿運輸局長の諮問機関)が近畿圏の鉄道ネットワークに関する意見を取りまとめた際、同審議会は大阪国際空港広域レールアクセスを中長期的に整備が必要な路線としました。

 しかし、これらの構想は、いずれも実現していません。直接的には事業費や採算性の問題をクリアできなかったためですが、そもそも伊丹空港の「未来」が見えなかったことも、背景にあります。

 伊丹空港は高度経済成長に伴って飛行機の発着数が増加。一方で周辺の人口も増え、飛行機の騒音が大きな社会問題になりました。そのため、大阪湾に新しい空港(現在の関西空港)を整備することが計画された際、伊丹空港の廃止も考えられるようになり、アクセス鉄道を整備すべきかどうかの議論も停滞したのです。

 関西空港の着工から3年後の1990(平成2)年には、伊丹空港の存続が決まりましたが、2010(平成22)年前後には、大阪府の橋下 徹知事(当時)が伊丹空港の廃止論を唱えます。これは伊丹空港跡地の開発利益で大阪の中心部と関西空港を結ぶリニアモーターカーを整備しようというもくろみがあったため。その影響で伊丹空港アクセス鉄道の検討も再び停滞したといえます。

 その後、伊丹空港の廃止論は尻すぼみになり、旅客数も2012(平成24)年度以降は増加が続いていることもあって、アクセス鉄道の整備の機運が再び高まったといえます。路線の事業費や採算性だけでなく、伊丹空港の存続方針を引き続き維持できるかどうかも、大阪空港線の実現のカギを握っているといえそうです。

【了】

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コメント

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6件のコメント

  1. >伊丹空港の廃止論は尻すぼみになり
    いやいや、リニア開業と同時に廃止予定です。

  2. なにわ筋線~十三~新大阪が開業しているのが前提として…
    十三~大阪空港は三線軌条にする。
    阪急梅田~大阪空港と南海orJR~なにわ筋線~大阪空港の直通運転系統を設定する。
    これくらいしないと値打ちが無い。

  3. 阪急なんて観測気球ばっかりなんだから本気で作る気があるわけがない。
    大阪府や大阪市が金を出してくれる前提の、人任せの無計画な話

  4. この計画は頓挫するだろう。必要性がないから。昭和30年代くらいに、豊中から分岐させて空港線をつくる決断をするべきだったが、阪急は踏み切らなかった。伊丹線と空港線(幻)をつなぐくらいしてもよかったのだ。

    いまとなっては、バス便が充分便利だし、モノレールまでできてしまった。いまさら空港線をつくられても、宝塚線、能勢電鉄線の利用者が迷惑するだけ。

    本件とは関係ないが、山陽新幹線に大阪空港駅をつくるべきだった。日本では各交通機関の連携が考えられていないので、こうした発想は生まれないのだろうか。

  5. いまさら要らない。バスで十分。よほどの渋滞でもないかぎり、30分程度で着く。阪急梅田駅のホームは3階にあるが、バス停は地上。上下の移動を考えると、バスのほうが楽。

    大阪空港線をつくるなら昭和30年代にやっておくべきだった。阪急は中途半端な事業が多い。たとえば、伊丹線を川西まで建設しておくべきだったし、箕面線も茨木あたりで京都線と接続させておけばよかった。

    この計画にかんしては、必要ないし、そもそも宝塚線の過密ダイヤを考慮すると不可能だとおもう。

    話題はずれるが、山陽新幹線を大阪空港の近くに建設し、空港駅をつくってくれていたら便利なのにとおもう。

  6. 先に梅田駅を集約してほしい。
    阪急阪神地下鉄×3にJR。
    全てバラバラでどこの乗り換えも遠い。
    百貨店を抱える私鉄は無理だろうけど。