定着する鉄道の計画運休に次の課題 運転再開のタイミングとその告知、どうすべき?
今後の課題は、信頼の醸成
今回は、実施24時間前にあたる前日11日(金)の昼前に、12日(土)の午後(路線によっては朝)から順次本数を減らして運転を終了することと、13日(日)の運転再開はおおむね昼以降、安全の確認が取れ次第になると、かなりの余裕をもった表現で発表されました。
13日が日曜日で通勤・通学への影響が限定的だったという事情は差し引いても、実際の各路線の運転再開は、早い路線では予告を前倒して7時ごろ、遅い路線では夕方に延長になり、一部は終日運転見合わせという結果になりましたが、大きな混乱や批判が起きなかったというのは、鉄道事業者にとっては少々意外な結果だったのではないでしょうか。
それ以上に驚かされたのは、さらなる「速断」を求める世論です。これまでにない早いタイミングで計画運休の実施可能性を発表した10日(木)の時点で「計画運休をやることは分かっているから、詳細を早く公表してほしい」という声が多くみられました。すでに計画運休は、認知や是非を問う段階を飛び越えて、社会に組み込まれつつあると言っても過言ではありません。
今後の課題はさらなる信頼の醸成です。首都圏で計画運休を実施した過去3回の台風は、すべて実際に大きな被害を出しており、幸か不幸か「空振り」はありませんでした。しかし今回の関西がそうであったように、いずれ空振りが発生することは避けられません。それでも、備えておいてよかったと利用者が受け止められるように、鉄道事業者は実施手法と情報提供の改善を続けていく必要があるでしょう。
【了】
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
>備えておいてよかったと利用者が受け止められるように、
未来永劫そんな事は思わないだろうな、
思う日が来たら鉄道が無意味な存在になるときだ。