さようなら「千代田線6000系」 根津メトロ文庫、始まりは駅員お手製の販売ボックス

閉鎖相次ぐ「地下鉄文庫」、残るは本駒込駅

 これ以降、「地下鉄文庫」が新聞に取り上げられるのは、きまって「本が返ってこない」「存続の危機」という話ばかりです。1999(平成11)年8月23日の読売新聞夕刊は、営団の調査によると本の返却率は5~10%程度で、本棚に1冊も本が残っていない駅もあったと伝えています。地域に根付いた根津メトロ文庫は、さすがに返却率が最も高かったそうですが、それでも50%程度というのが実情でした。

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「根津メトロ文庫」の様子(2019年10月、乗りものニュース編集部撮影)。

 記事は、このままでは「地下鉄文庫」を閉鎖する駅も出てきそうだと締め括っていますが、その危惧は的中してしまいます。2007(平成19)年1月13日の読売新聞夕刊によると、1999(平成11)年に27駅にあった「地下鉄文庫」は、2007(平成19)年には14駅まで減少。2013(平成25)年2月12日の朝日新聞夕刊によると、この時点でわずか5駅まで減っていました。

 ちょうどこの頃、地下鉄トンネル内で携帯電話が利用できるようになり、スマホ普及率も50%に到達します。ただ車内で本を読む人が減り、スマホをいじる人ばかりになったというのは一面的な見方でしかありません。新聞や雑誌、書籍という紙媒体による読書から、スマホによるデジタルコンテンツとしての読書へと移行が進んだことこそが、時代の変化と言えるのでしょう。

 最盛期は30駅近くにあった「地下鉄文庫」ですが、根津メトロ文庫の閉鎖によって、残すところ本駒込駅(東京都文京区)のみとなります。こちらは今のところ撤去の予定はないそうです。

【了】

【写真】本物そっくり! パンタグラフが付いた図書室

Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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