ハイテク戦車でも乗員の技量が問われるのはなぜ? 陸自戦車射撃競技会に見るその理由

戦車砲の照準もいまやコンピューター制御があたりまえの時代ですが、それでも陸上自衛隊では、競技会などを通して隊員の射撃技量向上に努めています。どのあたりに、人間の介入する余地があるのでしょうか。

ハイテク戦車でも百発百中とはいかないワケ

 射撃競技会に参加したのは陸上自衛隊の90式戦車と10式戦車で、そのうち90式の部門が報道公開されました。

 1990(平成2)年に制式化された90式戦車は、北海道以外では静岡県御殿場市の駒門駐屯地に所在する機甲教導連隊と、茨城県の陸上自衛隊武器学校にしか配備されておらず、本州では見ることもまれな戦車ですが、陸上自衛隊の現役戦車全体では最も配備数の多い戦車でもあります。

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競技は4両ひと組の小隊単位で競われる。写真左に見えるのは90式戦車回収車、90式戦車の整備支援や、万が一のトラブルに備える(稲葉義泰撮影)。

 90式戦車は、自動装てん装置の採用により装てん手が不要となったため、乗員数が従来の4名から3名へと省人化されたほか、高度な射撃管制装置とコンピューターなどを搭載したことにより、移動しながらでも目標に正確に砲弾を叩き込める性能を有しています。その性能を活かして、例年8月に富士山のふもとで開催される「富士総合火力演習(総火演)」では毎回、見事な射撃を披露しています。しかし、今回取材した射撃競技会では、標的にわずかな差で命中しない、あるいは大きく標的を外してしまうという光景を筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は時折、目にしました。なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか。

 まず、今回の射撃競技会は戦車と標的との距離が非常に離れており、当然、「距離」は射撃にとって大きな障害となります。距離があれば、戦車が射撃する位置と着弾地点とのあいだで、風向きや気温が当然、変わります。もちろん、90式戦車には風向きなどを計測する風向センサーが装備されていますが、これはあくまで搭載車両周辺の計測を行うもので、遠く離れた目標周辺の風向きなどは計測できません。そのため、遠距離の標的に対して射撃すること自体が非常に難しい作業なのです。

【写真】50tを吊る「戦車のためのクルマ」 ほか「北部方面隊戦車射撃競技会」の様子

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