異形すぎて不採用 ドイツ偵察機「BV141」 要望どおり作ってなぜそうなった?

生真面目に作って性能も申し分なし だけど…

 ブローム&フォス社の主任設計技師リヒャルト・フォークトは考えました。ドイツ航空省が出した要求仕様に沿ってエンジン単発で3人乗りにしようとすると、機体中心線上に乗員室があった場合、胴体や主翼で視界が大きく妨げられてしまいます。それを避けるために、コクピットを含む乗員室を右主翼に移設したのです。

 これならば、前後左右だけでなく下方視界も広くとることができます。また後方視界も垂直尾翼や水平尾翼などに遮られることがありません。加えてプロペラ機に見られる進行方向の傾き(プロペラが操縦席から見て右回転のとき、機体には左ロール方向へ反力がかかる現象)も、機体の重心が偏っていることで打ち消せました。メリットが大きいとしてリヒャルト・フォークトはこの形状で設計を進めました。

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試験飛行を行うBV141偵察機。飛ぶ姿は異形そのものである(画像:ドイツ連邦公文書館)。

 こうして生まれたのがBV141でした。従来の航空機の概念を打ち破る外観の試作機は、1938(昭和13)年2月25日に初飛行に成功しました。性能は航空省の要求仕様をクリアしており、操縦性は良好で、安定性も問題ありませんでしたが、結局、BV141はコンペに落ちました。

 ドイツ航空省が採用したのは、なんと要求を無視して、双発で製作されたフォッケウルフ社のFw189でした。Fw189はBV141と比べて最高速度も巡航速度も、航続距離も、さらには実用上昇限度まで、これらすべての面で劣っていたにもかかわらずです。

 要求仕様書に沿っていなかったFw189が採用された理由、それは、やはりBV141の奇抜さが航空省の役人や空軍の軍人には理解できなかったものと考えられます。いくら性能的に優れていても、運用側からすると安心して使えるか否かはとても重要です。また形状が奇抜だったことで、耐久性や整備性に疑問符が付けられたと思われます。

【写真】一目見て安心のスタイルでまとめられたFw189

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コメント

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6件のコメント

  1. 重要な箇所を筆者のもっともらしい憶測でごまかすのは実に卑劣。これなら個人サイトに載ってる情報のがよっぽど有益。

    • 同じ感想を持ちました。肝心なところが「思います」では…

    • まるで個人サイトの方が信頼がおけるとでも言いたげですが、根拠は?
      それともあなたの方が真相に詳しいとでも?些か思い上がっていませんかね…
      ついでに言うと、人類の科学は詰まるところ全て「思います」で構成されています

  2. 具体的な欠点があって搭乗兵や整備スタッフから嫌われたのでしょうか、それともこの飛行機の良さが偉い人たちには分からなかったのでしょうか。
    せめて主に誰がダメ出しをしたのかくらいは突っ込んで取材してきて欲しかったですね。

    • 性能は競合機より高性能だったけど
      「いや、流石にこんな機体量産するのは面倒くさいやろ」っていう役人の意見と競合相手が政治的に強いフォッケウルフ社だったのが敗因

    • これ、フライトシミュレーターで飛ばしたことがあります。
       実はコクピットからの視界に、致命的な問題がありました。操縦席も後部の偵察席も、前後と右は単発機よりもよく見えるくらいですが、左側は前から後ろまで、広く胴体に覆われてどうしようもない。飛行中は頻繁にバンクを繰り返して、胴体の影に敵機がいないか監視しないと飛べない偵察機ですね。
       おまけに…この時代は着陸進入時、通常は左旋回で飛行場上空を一周するのですが、肝心の滑走路が非常に見えにくい。なので他機とのニアミスも起きやすい。実戦どころか、ただ飛ぶだけで大問題です。
       アイディア倒れの飛行機と言えますが、実際に作ってしまうところがすごい。当時はもちろん、パソコンベースの安価で高性能なフライトシミュレーターなんてありませんでしたが、図面を見るかモックアップを作ってコクピットに座ってみれば、欠点はよく分かるでしょうに。