「大型フェリー船長」の仕事を聞く 旅客船ならではのやりがい その魅力&なり方は?
RORO船は「男子校のような雰囲気」
――船乗りになるために、具体的にどのようなことをしましたか? 乗りもの酔いはどうなったのでしょう?
船乗りになるには「海技免状」という国家資格が必要なので、専門の教育機関に進学することが必要です。私は茨城県取手市の出身ですが、中学卒業後、富山の商船高等専門学校に入りました。
学校見学に行ったときも寝台列車で酔いましたが。高専時代もまだダメで、航海実習のあいだは断食していましたね。それが、就職してから酔わなくなったんです。3等航海士になったという自覚が芽生えてから急に強くなり、それから職位が上がるたびに大丈夫になっていきました。責任感というか、「そんなことは言っていられない」という状況のせいでしょうね。
――最初から「さんふらわあ」に乗っていたのですか?
最初は九州急行フェリーという会社で、貨物を積んだ無人トレーラーや無人トラックをそのまま運ぶRORO船に乗っていました。有人トラックのドライバーさんなどはまれに乗車しますが、一般のお客様は乗りません。ですから、ヒゲははやしっぱなし、お風呂上りはラフな格好で、ちょっと男子校のような雰囲気でした。
2007(平成19)年に会社が商船三井フェリーと合併し、私は1等航海士として旅客フェリーへ乗船するようになったのですが、最初は勝手が違って戸惑いました。お客様に対応するということもですが、フェリーは公共の交通機関ですから、出航時間が厳格に決まっています。それに合わせた積載プランを立てないといけないのですが、ギリギリに乗船される方もいらっしゃるので、そこは最初のうちは戸惑いましたね。
――船員さんの数も違うのですか?
多客期と閑散期でも違いますが、「さんふらわあ」では夕方便で34人、深夜便では28人くらいで働いています。乗船していたRORO船は同じくらいのサイズで13人でしたから、船長としてまとめる数も違ってきます。
だいせつの火災での船長さんや亡くなられた船員さんの船乗りとしての使命感は学ぶべきところが多い。
商船三井及びそのグループに属する会社にこのような人材が居ることはせめてもの救いである。