「ドクターヘリパイロット」の仕事を聞く 1分1秒争い命守る現場 やりがい なり方は?

農作物に被害を出さないよう判断が求められる場面も

――季節によって、出動回数の違いもありますか?

 気温が高すぎたり低すぎたりして、人が体調を崩しやすい時期や、新しいことを始めて慣れてなかったり、焦っていたりする時期に多く出動があります。気温が高い日は熱中症、気温が低い場合は脳血管の詰まりや出血といった内因性の症例がよく見られます。

 交通事故が多いのは4月やお盆、夏休みや年末年始などです。地域によっては、クマによる外傷や、稲刈りの時期など機械に挟まれるというケースもあります。稲刈りが終わった田んぼもしくはあぜ道に着陸する場合もあるのですが、田植え直後などは、ヘリの風圧で苗が倒れてしまい、農作物に大きな損害が出ることも考えられます。上空から「何がどのくらい植えられているのか」を見て、着陸するのに被害が出ない場所と角度を瞬時に判断することも求められます。

――操縦以外にも、予想もつかないような、いろいろなスキルが必要なのですね! この道を目指す人に、メッセージをお願いします。

 私たちは日々、消防の方々やヘリコプタースタッフも含め、「助けるんだ」という同じ目標で行動しています。こうした志の高い場所で働けていることがありがたいと感じています。日々勉強の積み重ねですが、それだけのやりがいがある仕事だと思います。

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日没までもう間もなく、この日最後のフライトへ。写真左の操縦席に宮田さん(2019年11月5日、乗りものニュース編集部撮影)。

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 この後、また出動した宮田さん。そして帰還後、まだドクターたちがストレッチャーを下ろしている横で、すぐ燃料の補給を始めた姿に衝撃を受けました。常に次の患者を助けることへ目を向ける姿に、「ひとつでも多くの命を助けるんだ」という気概と使命感を感じて胸が熱くなりました。これまで最もやりがいを感じたフライトを聞くと、「傷病者の方が助かったフライト全てです」とのことでした。

●「ドクターヘリ操縦士」のお仕事:朝日航洋株式会社 宮田貴資さん
・切替能力:☆☆☆☆☆回転
・作物洞察指数:☆☆☆☆☆回転
・着陸技術:☆☆☆☆☆回転
・現場緊迫度:☆☆☆☆☆回転
・ヒーロー度:∞回転

【了】

【写真】ドクターヘリの機内 狭いながら機能的

Writer: 大西紀江(ライター/編集者)

静岡・伊豆出身のライター、編集者。乗りものオタクの総本山ともいうべき某出版社の編集を経て、フリーランスに。以来、自動車を中心に模型から時計まで、幅広く執筆&編集を手掛ける。象の調教師の免許あり。

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