クルマだと普通ない「RF車(リアエンジン フロントドライブ)」 「戦車」にはある謎

ドライブシャフトって実は邪魔

 とはいえ、エンジンと操向装置の両方を車体後部にまとめて配置するには、別の問題がありました。「操向装置」とは、エンジンで発生したパワーを左右の起動輪に伝達するための変速機を含む装置のことです。戦車用のエンジンや操向装置は、サイズが大きく重たいものです。そのため、両方を車体後部に配置すると、リアヘビーとなって車体の重量バランスが悪くなります。

 そのため、昔の戦車はリアにエンジン、フロントに操向装置を置き、両者をドライブシャフトでつなぐ構造としました。大重量のふたつのものが車体の前後に配置されれば、重量バランスはよくなります。

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RF構造のアメリカ製M4「シャーマン」戦車。車体前方下部にあるボルト止めの三分割式カバーの部分が操向装置(柘植優介撮影)。

 このほかに操向装置が前に置かれたもうひとつの理由として、操縦手がレバー操作するのにそれらが前にあった方が構造の簡易化などで都合がよかったからというのもあります。

 操向装置が車体前部にあるため、起動輪(駆動輪)も前にあった方が合理的で、戦車はRF(リアエンジン、フロントドライブ)となりました。このRF構造は日本をはじめとしてアメリカやドイツ、イタリアなどの戦車が用いていました。

 一方イギリスやソ連(当時)は、エンジンと変速機の両方を車体後部に配置するRR構造を広く採用しており、フランスはメーカーによってRFとRRの両方ありました。ただし車内容積の問題や、前述したような重量バランスの問題などから、この頃のRR構造の戦車は砲塔が前に寄っていました。

 RF構造のデメリットとしては、車体前部に操向装置があるため、外部ハッチや外装式の取り外し可能なカバーが車体前部にあり、FFやFRと同じく防御上の弱点になることが挙げられます。しかも変速機が前にあるということは、仮にエンジンが被弾しなくとも、変速機が敵弾で破壊されれば走行不能になります。

 また前述の車体中央にドライブシャフトがあるため、これにより車内は狭くなり、車両によってはそれゆえに車高を低くできない弊害もありました。戦車は車高が低い方がシルエットが小さくなり、被弾しにくくなります。

【写真】90式戦車のエンジンを外す90式戦車回収車

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