「ガトリング砲」と「バルカン砲」 何が違うのか? 一時は廃れていたガトリング砲

一度廃れたガトリング砲が復活したワケ

 ガトリング砲の構造が見直されるのは、第2次世界大戦直後のことでした。それは軍用機のジェット機化が大きく影響しています。

 ジェット機になったことで、防弾板などで機体重量が増えても飛行性能に影響が出なくなり、さらに高速で飛べるようになると、従来の、軍用機や地上や艦艇上で使用されていた対空機関銃の発射速度では対応できず、仮に当たったとしても撃墜しにくくなったのです。

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航空自衛隊のF-4EJ改やF-15J、F-2の各戦闘機が搭載する20mm機関砲(バルカン砲)M61。厳密には「バルカン」と呼べるのはこの砲のみ(柘植優介撮影)。

 そのため戦闘機搭載用の機銃などにおいて、破壊力の高い大型弾を高速連射することが企図されるものの、単銃身の機関銃では銃身の加熱の問題や構造上の限界がありました。そこでアメリカ空軍が目を付けたのは、倉庫に眠っていたガトリング砲でした。

 ガトリング砲はひとつの銃身で数多くの弾を撃つのではなく、複数の銃身を回すことで1発ずつ順に弾を発射していきます。これならば、理論上は銃身の摩耗や加熱を単銃身よりも抑制でき、外部動力で動くため弾づまりなどが起きても強制的に排莢し、次弾発射できるため動作の確実性が高いです。また多銃身と大型化による重量増大は、航空機搭載のため問題とされませんでした。

 こうして約40年ぶりに、ガトリング砲は日の目を見ます。制式化された航空機用ガトリング砲はM61という型式名が付与され、ギリシャ神話に登場する火の神にちなんで「バルカン」と名付けられました。

 M61は、口径20mmの銃身を6つ束ね、それを電動で高速回転させます。高速回転で発射速度は毎分最大6000発です。

 ただし「バルカン」は商標登録されたため、基本的に20mm口径のM61しか「バルカン砲」とは呼びません。そのため、A-10「サンダーボルトII」攻撃機などが搭載する30mm口径のものは「アヴェンジャー」といい、小型の7.62mm口径のものは「ミニガン」と呼ばれます。もちろん、いずれも「ガトリング砲」の一種であり、そう呼んでも差し支えのないものです。

 とはいえ「バルカン砲」という名称も、「キャタピラ」や「ホッチキス」などと同じように、いつかは「ガトリング砲」と同義になっていくのかもしれません。

【了】

【写真】市販車よりもビッグ 総重量約1.8tの30mmガトリング砲

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

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6件のコメント

  1. これって乗り物の話じゃないよね

  2. "「バルカン砲」という名称も・・・いつかは「ガトリング砲」と同義になっていくのかも"

    宇宙世紀0079ではその通りになりましたね。

  3. 人身事故というのは、1日に結構ありますね

  4. ガトリング砲は砲の種類の名前でバルカンは製品名だから、乗用車とプリウスはなにが違うのかと論じているようなもの。

  5. 写真はF-4用のAHS(アミニッション・ハンドリング・システム)と言います。
    航空祭の時の写真?でもバレル(砲身)が錆びてるなんて。( ̄▽ ̄;)

  6. 「ガトリング砲」だってガトリング作の最初のアレから借用して一般化した名前でしかないわけで
    「バルカン砲」が同じ道をたどって一般化するのは別に不自然でも何でもないし
    両者の違いを必死に探してもしょうがないと思う、根っこの定義がざっくりなんだから。
    本質的には何も変わらないんだし、そんなものを強調しようとすればするほど
    それを伝えたい対象の人からすれば痛いだけ煩いだけにしかならないよ