翼たたんだ状態でなぜ飛べたのか? アメリカ海軍の空母艦載機 F-8「クルセイダー」

翼をたたんだままの離陸は訓練の想定が原因か

 なぜ、ここまで翼をたたんだまま飛び立つことが多かったのでしょう。それは当時、アメリカ海軍および海兵隊が実施していた訓練内容にありました。

 訓練では実戦を想定して、陸上基地でも空母の甲板上と同様、エンジンを回したままで燃料補給などをしていました。この際、海軍や海兵隊では給油の際、翼はたたんだまま実施し、翼の展開は滑走路の端まで移動したのち、と規定されていたのです。

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ベトナム戦争中の1967年、空母「ボノム・リシャール」の甲板上に並んだF-8「クルセイダー」戦闘機(画像:アメリカ海軍)。

 昼間であれば地上の支援要員や、管制塔の管制官などが目視で気づくこともありますが、夜間訓練などでは誰も気づかないまま、離陸してしまうことがあったようです。

 それでもF-8「クルセイダー」が7回とも大事故に至らなかったのは、その機体構造が大きく関係していたと見られます。同機は左右の主翼の内側、すなわち折りたたみ部分ではない固定翼の部分に、飛行を制御するエルロン(動翼)があり、たとえたたんだ状態で離陸してもある程度、機体を制御することが可能だったようです。

 ちなみに、翼を広げ忘れて離陸した事例はA-1「スカイレーダー」攻撃機にもありました。しかし同機は主翼の折りたたむ部分と固定された部分の両方に、エルロンがあったことが致命的でした。そのため、A-1「スカイレーダー」の場合は機体操作ができず、パイロットは脱出し、機体はそのまま墜落しています。

【了】

【写真】主翼をたたんで離陸したA-1「スカイレーダー」の同型機

Writer: 柘植優介(乗りものライター)

子供のころから乗り物全般が好きで、車やバイクはもちろんのこと、鉄道や船、飛行機、はたまたロケットにいたるまですべてを愛す。とうぜんミリタリーも大好き。一時は自転車やランニングシューズにもはまっていた。

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コメント

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7件のコメント

  1. エルロン侮り難し

  2. エリア88でネタになってて、当時の雑誌で飛行中に折り畳みは不可能とフォローが。
    主翼が畳まれてるよ!!サインが目立つようについてないとダメだね。
    批判でなく自戒として。

  3. 飛行隊の表記がVFAになってるけど当時はVFでは?

  4. えーと、クルーセーダーの折りたたみは翼長の三分の一です スカイレーダーの折りたたみは三分の二です 答えはここでしょう
    スカイレーダーのキャノピーはかなり前にあるので見落としたかな でもそのおかげで射出できた

    翼を出し忘れたと悟ったら、アビエイターはエルロンを動かさずにとにかく速度を獲得しようとするでしょうね 十分な行動と速度に達したらラダーだけで旋回でしょう 飛行士の基本です いつわかるか? 離陸速度なのに浮き上がらないのでわかるはずです でも滑走路の残りは足りないので上がるしかない
    ここから先は想像ですが、クルーセーダーの仰角上げ機構と折りたたみ機構の操作が関連していたのではないかな

  5. まあ今なら、畳んだ状態では離陸できない仕様にするだろうね。

  6. エリア88はあながち嘘描写じゃなかったということなんでしょうか?
    それとも離陸はOKでも、飛行中は無理ということですか?
    気になる・・・。

  7. そういえば、新谷かおるの空戦漫画「エリア88」の初めの方に、主人公風間真がF-8の主翼を畳んで攻撃を回避する場面がありましたね。
     読んだ当時はまったく荒唐無稽に思えたけど、その後実際に畳んだまま飛んだ例があることを知って、新谷さんはなかなか勉強しているなと思いました。しかしF-8 だって、飛行中にわざわざ畳んだ例はないでしょうね…。